初めての相続
殆どの方にとって、相続は人生でそう何度も起きる事では無いと思います。特に初めて相続の場合は、財産が何処にあるかも解らず途方にくれる事もあるかと思います。
今回は、どこにあるか解らない相続財産をどう探し出しどの様に財産目録にして行けば良いのか不安を抱える方の為にその対応策を下記の表に示しました。
以下、その中で特にポイントとなるいくつかノウハウを取り上げて説明します。
除籍謄本と戸籍謄本
これは、直接資産の数字とは関係しないので一見奇異に感じるかも知れません。しかし、この先金融機関に各種申請をして行く上であなたの身分を証明し被相続人の金融情報を教えてもらう上で基本的に必要な証明資料となります。
意味
被相続人は、相続者としての身分を証明する為に戸籍謄本が必要です。また、被相続人(故人)は除籍謄本と出生から死亡までの全ての戸籍が通常必要です。故人の除籍謄本は、亡くなった日付(通常は、相続が開始した日と同じ)を証明する効果があります。また、出生から死亡までの全戸籍を集める趣旨は、これまで知られていなかった隠れた実子や養子など別の相続権者がいるか否かを確認する事で、後になってから名乗り出られる事を防止し税控除の計算や申告税額特定の精度を確保する目的もあります。
集め方
相続人の戸籍を取得する。
これは、ご自身の本籍地が近ければそこの役所に出向き写真付き身分証明書を提示し所定の料金を納めればその場で発行して貰えます。本籍地が遠隔地の場合は、その地元自治体の戸籍課のウェブサイトから郵送申請用の戸籍請求書式をダウンロードして指示に従って請求します。請求の際、「相続のため」と明記しましょう。役所の窓口でも必要なアドバイスや質問をしてくれます。
被相続人の除籍謄本と戸籍謄本
一方、被相続人の除籍謄本と戸籍謄本はトラッキング作業が必要です。まずは、あなたと被相続人の関係を証明する戸籍で故人の以前の戸籍の本籍が記された戸籍のコピーを添え、そこの以前の本籍がある自治体の戸籍課に上記と同じ手順で戸籍請求をします。その時、請求理由記載欄に「本人死亡のため、出生からX X戸籍へ移り除籍するまでの全ての情報をください」と明記します。郵送の場合は、郵便子為替を多めに入れましょう。料金不足の場合は、連絡がくるので現金為替等で送付可能ですがタイムロスが生じます。特に、準確定申告期限は直ぐに来てしまいます。
ここがポイント
取引先金融機関が複数に渡る場合や、遺産分割後の不動産登記が予測される場合は、かなりのセット数の戸籍を取得するか一件づつ順番に調査を進めて行かざるを得ず時間切れになる懸念があります。その対策として、法務局に行き法定相続情報一覧図(写しの発行は無料)を多めに発行してもらいましょう。また、事前にこの事を理解して置けば戸籍を何セット請求すれば(最低でも相続人と被相続人合わせて1セット当たり2,400円は必要)良いかが判断できます。(詳細は、これは便利、法務局の法定相情報証明続制度 参照)
金融機関残高証明書
ここがポイント
何処の銀行に被相続人の口座があるのか解らない場合、各金融機関のコールセンターに問い合わせ相続人の口座有無の確認手続きを申し込みましょう。これは、郵送で行われるのでかなりリードタイムが必要です。早めに着手しましょう。また、金融機関が特定出来たとしても手元にある通帳で全部なのか不安な場合には、「名寄せ」を行う手続きもしておきましょう。
所有不動産の登記簿
不動産のある場所の本籍が解らない場合は、法務局の管轄出張所へ行くと自分で調査できる端末が利用できます。そこで、その物件の所在地住所を入力すると本籍を知ることが出来、続けて登記簿謄本の請求に進めます。問題は、他府県にある別荘そのたの不動産やその売買の登記簿などの記録収集です。必要な場合は、その他府県の管轄法務局の支局に問い合わせ遠隔で申請する方法を確認しましょう。
株式の残高証明書
ここがポイント
色々株式を持っていたらしいが何処の証券会社か見当が付かない場合、証券保管振替機構で「亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認」サービスを提供しています。6,000円程度の検索費用が掛かります。
美術品
ここがポイント
まずは、当該美術品や貴金属が高価なお宝なのかそうでないのか解らないものが大量にあった場合、又は一件5万円程度の鑑定費用をわざわざ支払って真贋鑑定は価格評価をしてもらう価値があるかどうか迷う場合は予備調査が必要です。
その予備調査には、数秒でできる便利な方法があります。スマホの、Googleアプリを使います。Googleをタップしアプリを起動し、右上のマイクのアイコンの隣にある四角いカメラアイコンをタップします。次に、対象物を写し画面の中の青いボタンをクリックして画像を認識させます。すると、1〜2秒でその対象物の中古品相場か類似品の新品の定価が複数表示されます。その価格帯を参考にして①5〜6万円以下の物と、②中古価格でも数十万円以上の物、③若しくはここにも表示されない程度にレアーで高額かも知れないものをグループ分けします。
生命保険金
相続人が受け取り人となっていた、死亡保険金を受け取る権利も財産権の一つです。しかし、その他の相続財産と異なる点は名宛人が特定されている事です。また、行政は終身保険に関して国民の長期貯蓄促進の目的で別建ての税額優遇措置を設けてきました。しかし平成27年の相続税制度の改正により修正がかかっています。その権利の名宛人を、一人で引き継ぐのか或いは数人で分割するのかなどについては、保険証券記載の窓口に相談し現行の生命保険金税控除制度下での当該保険の種類・内容・保険金支払い予定金額の多寡を踏まえ予想課税額を具体的にシミュレーションして貰った上で意思決定する事をお薦めします。
二次相続をどうするか留意
相続財産全体の2分の1で且つ1億6千万円以下なら非課税、という「配偶者の税制軽減」の枠は必ずしも満額使うのが有利とは限りません。それは、二次相続の際少なくとも相続人が一人減り控除額が減少する分支払い税額の相続財産に対する比率は上昇するからです。一次相続と二次相続の税額の組み合わせを税務の専門家にシミュレーションして貰い、その二つの相続の間にどの様な節税対策を取り得るか相続人間で十分協議を重ねた上で相続資産総額が最も効率的に引き継げる分割比率を確定しましょう。
資料:相続税申告に必要な書類11件_これだけ揃えばあとは税額計算だけ
必要書類 | 備考 | 請求方法 | |
1 | 相続人全員と被相続人の戸籍謄本 | 被相続人は、除籍謄本と出生から死亡までの全ての戸籍 | 本籍地自治体戸籍課に郵送請求する。 |
2 |
金融機関残高証明書 | 既経過利息の記載も依頼する
3年分の取引履歴コピーも依頼する |
まずは被相続人の口座のある金融機関に、「残高証明書の申請場所」と「残高証明書発行に必要な書類」等を電話で問い合わる。
また、通帳がない場合には出入金の履歴を確認するため「通帳の履歴」が欲しい旨も伝える。 必要書類の例:
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3 | 所有不動産の登記簿 | 公図・測量図
納税通知書 |
管轄法務局にて申請、本籍地がわかれば誰でも請求可能。 |
4 | 株式の残高証明書 | 相続発生時点
基準日価格が載っている資料 |
取引先証券会社の相続センターに電話して請求する。提出書類の例:
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5 | 各種会員権 | 会員証
預託金 |
各クラブに電話し、会則を入手。
会員権を紛失した場合は再発行手続きを進める。 係に預託金証明発行を請求。 |
6 | 美術品 | 評価鑑定書 | 高額品は鑑定依頼に出す。ネット鑑定や、購入先又は日本税理士協同組合連合会などで鑑定を扱っている。
低価格品は、古物商等で査定してもらう。 |
7 | 生命保険金 | 相続発生後入金
又は今後の入金予定通知 |
生命保険各社の相続センターに電話し請求する。
*生命保険は、受取人が指定されているため原則遺産分割協議の対象外であるが、当該受取人の持分には合算評し価される。 |
8 | 生前贈与
(他界前3年間) |
贈与財産関係書類 | 贈与契約書、登記簿謄本その他、相続時精算課税制度を利用する場合の関係書類等。
贈与税の基礎控除の範囲内(年間110万円以下)で毎年贈与を繰り返していた場合や現金手渡しで生前贈与をしていた場合:出金記録と入金記録その他の説明資料。 |
9 | 未納公租公課 | 相続発生後納付した領収書、今後の支払い予定額
固定資産税・住民税など |
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10 | 葬式費用の領収書 | お布施・お車代などはメモで可
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11 | 未払い金の請求書・領収書 | 相続発生後の支払い、今後支払い予定のもの
医療費・保険料・公共料金など |
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