初めに
3月中旬以降、申請ボタンを押してから口座に入金するまでの日数は早まっています。審査期間だけ見ると、3月上旬の約半分に短縮されて来ています。しかし、その一方で報道等によると長期間何の音沙汰も無くしかもステータスも変更されない「塩漬け」のケースも一部にはある模様です。この二極化現象の狭間で、最近信じられない速さで入金した青色申告個人事業主の方と法人様の詳しい情報を入手する事が出来ましたのでご紹介します。どちらにも共通する事は、審査前に少し余計に時間を割いて準備した点でした。この文章を最後までお読み頂くと、審査部門の台所事情を知る事ができ失敗の無い申請をして頂くことが出来ます。
青色申告事業主、中3日で入金
3月現在の、青色申告事業主の方の平均的な着金インターバル(申請ボタンを押してから口座入金まで)の日数は、当事務所のお客様からの情報を集約する限りではほぼ8日程度です。これに対し、申請ボタンを押してから中3日(つまり4日目に)口座に支援金が入金したお客様が居ました。おそらく、記録的速さではないかと思います。詳しい状況をお聴きした所そのノウハウが解りました。先ずこの案件は、前確認の際に添付資料の内容に少し難しい点がありそうに思えたので、コールセンターに事前相談をなさる様当方からお薦めしていました。この申請者様は、それを実行されました。すると、事務局のコールセンター担当者の方も懇切丁寧に指導して下さったとの事です。
特急入金にシフトしたきっかけ
普通ですと、そのまま注意事項を守り申請ボタンを押します。すると、何も不備が無くとも入金までにほぼ1週間程度は掛かります。しかし、この申請者様は懇切丁寧にご指導いただいた「疎明事由の説明書き」の末尾に、ご担当者のお名前と日付と時刻を「・・と〇〇様からご指示いだきました。〇月〇日X時XX分」と書き添えました。また、基準月の一つの取引のマネーフローを証明する、売上台帳・請求書・通帳の各該当事項に適切にラインマーカーを引いてハイライトしてありました。その結果、申請ボタンを押してから4日目の朝口座に入金していました。
ここがノウハウ
事前確認面談時の懸念事項は、銀行振り込み記録の数字と請求書金額が一致していない事でした。その理由は、2件の請求金額が合算されて該当月の銀行振り込みになって居たからです。この様な時、単純にハイライトしただけでは当然(数字が不一致なので)差し戻しとなります。問題は、備考としてこの事情をどう表現するかという点でした。ポントは、コールセンターに電話して具体的な指導を受けた事を、克明に再現し「いつどなたの指示を頂いて整えたエビデンスなのか」を明記し審査がすでにピンポイントで済んでいるに等しいとアピールする事です。
法人、中4日で入金
一方法人の審査は、2月当初は2週間以上かかりましたが3月に入ってからはかなり短縮しました。それでも、通常10日程度は掛かると思われますが、3月中旬に申請ボタンを押してから中4日(5日目)に口座入金した法人様からご連絡を頂きました。考えられる、審査短縮の理由としては「月次売上について総勘定元帳ではなく、月次試算表売上画像を添付したからでは?」とのコメントをいだきました。
事前の問い合わせは「太鼓判」と同じ効果
これら、2件の特急入金に共通して言える事は何でしょうか?一つは、どちらも入金日が3月17日(木)だった点です。因果関係の有無は解りません。もう一つは、どちらのケースも添付エビデンスファイルの準備に細心の注意を払っていた事です。更に、青色個人事業主の申請案件で中3日で入金した事例からは別の背景も読み取ることが出来ます。それは、「審査の効率アップに貢献すれば入金も特別早くなる」という相乗効果です。逆に証明資料の添付状態が「投げやり」な申請であると審査は手間取ります。これは、以下の理由で論理的に当然の帰結なのです。
例えば、皆さんが逆の立場で申請内容を吟味する役回りだったと仮定したらどうでしょう?審査官としては、クレームが来ないよう緊張感を持って慎重に確認して行きます。自ずから時間は掛かります。しかし、もしそこで信頼できる同僚の名前と指示を出した日時が明記され、審査要領に完璧に準拠したエビデンスに遭遇したらどう思うでしょう。私なら、一瞬にして次の審査段階に回付します。形式的に文句のつけようが無いばかりか、その証拠書類が十分に信頼できる太鼓判があるのと同等の印象を持つからです。そして、山積みになっている次の審査案件に飛び移ります。この事から、申請者側から事務局に事前に積極的な問い合わせをした上でそのメモを克明に記述し添付すれば審査の手間は省け、結果として「申請者にも審査側にもハッピー」な効果をもたらすことが判ります。
「シオズケ」申請にならない工夫は?
では逆に、長期間何の音沙汰も無く「シオヅケ」状態になる申請にはどの様な事由が考えられるでしょうか?ここで、それを防止する「転ばぬ先の杖」ベスト3をご紹介したいと思います。
「転ばぬ先の杖」第三位
- 添付ファイルの画像が見切れている。ぼやけている。
確定申告書そのたのエビデンスファイルは、綺麗に四角く鮮明に撮影されているでしょうか?時々、確定申告書を紛失している方をお見掛けします。その場合は、税務署に出向き「個人情報開示請求」をしてご自身の過去の申告済み資料のコピーを貰います。しかし、それには相当長い時間が掛かります。そこで、多くの方は閲覧のみをお願いして参照した資料の写真をスマホで撮影します。但し、そこで慌てて不用意な撮影をすると四角い書類の隅が見切れてしまいます。台形になったりしても、税務署受領印が判読できる程度に鮮明で全体が映り込んで居れば受理されますが、文書の一部が切れて見えなくなっている画像は受理されず差し戻しとなります。この画像に問題はないか留意が必要です。
「転ばぬ先の杖」第二位
- 添付資料のファイル名が不明確の為、意図した画像なのか誤った画像かを直ぐに判別出来ない。
また、事前確認段階で「ファイル名」の命名法則が無秩序になっている方もお見受けします。常識的には、確定申告書であれば「第一表2018年、第一表2019年・・・」や「青色申告決算書2018年P-1、青色決算2019年P-2。。。」や「免許証_日本太郎_表」などとファイル名自体で中身がわかる様一意に命名します。しかし、それが出来ていない申請者のエビデンスは取り違えてアップロードされている混同のリスクが推定されます。何故ならば、添付画像の点検をする際、ファイル名に意味づけが無い管理レベルでは、申請者自身が取り違えや二重に添付に気づけない懸念が強いからです。当然、審査に時間は長くなります。
「転ばぬ先の杖」第一位
- 当局の要求が理解できておらず、要件を満たした資料となっていない。
当認定機関の事前確認では、かなりの比率でこの問題を抱えておられる方が居ます。当事務所では、事前確認機関として事前確認会議の場で必ず指摘させて頂いております。しかし、これは事前確認機関の対応マニュアルに掲載されていませんので指摘しない事前確認機関もおられると想定されます。
それは、「申立書」を添付する事及び「内容を適切に記述する」事です。この申立書とは、正しくは「基準月の売上に係る請求書・領収書等又は通帳等の提出が不可能であることの申立書」の事です。飲食店や、現金取引ビジネスの場合通帳に入金証明が記帳されません。その場合に、この「申立書」を提出すれば問題ありません。
しかし、銀行振り込みを伴う掛け売り取引をしていている場合には別の問題が生じます。
では、ここで云う「当局の要求」の趣旨は何でしょう?過去の文章でもご紹介していますが、基準月の①売上台帳の明細と②請求書の金額と③通帳の記帳金額の3つのエビデンスで相互に1対1で対応し完全に一致する事です。取引先名は、売上台帳や請求書に記載された漢字の表記と通帳に記載されたカタカナの表記で照合するので明白です。問題は、その取引金額の数字です。特に、一つの大口顧客に複数の請求書が同一の月に発行された場合、取引先はそれを合算して一回で振り込んできます。この数字の食い違いを、どの様に表現するかが「特急振込」と「塩漬け申請」の分かれ道となります。
これは、現金取引と異なり「掛け売り」をしている場合に、請求書発行月と銀行振り込み記帳月がズレる事に起因する問題です。上記①で基準月の売上台帳として、仮に12月のリストをアップロードしたとします。では、②の請求書を正しき芋づけるには何月のものを取り出すのが正解でしょう?さらに③その金額が記帳されている通帳は何月のページに記載されているのでしょう?これらは、基準月の通帳記帳を中心に考えるか、売り上げ台帳を基準に考えるかで異なりますし、顧客と交わした入金条件によっても異なります。
また、1つの取引金額の相互同一性を証明するには、消費税額の加算金額と源泉所得税控除の控除金額も明示し請求金額と入金金額の食い違いの正当性を証明する必要があります。請求書の記載方法が杜撰だとこの部分はエビデンス上に注釈分のメモを追記して補完する必要が出てきます。もし、それが出来ない場合は基準月を変更するかコールセンターに電話して相談される事をお薦めします。
まとめ
以上の様に、申請添付書類の表記に迷ったらコールセンターに問い合わせるか身の回りのスペシャリストに相談して手戻りを防止しましょう。特に、コールセンターで具体的な指導を受ける事は、審査の繰り上げ開始と同じ効果がある事もご理解頂けたとおもいます。一件の申請が滞留すると、後続の多くの申請案件も停滞させてしまいます。貴方の申請の入金が、申請ボタンを押してから4日目や5日目でなくても、標準的なペースの1週間程度で着金すればそれで良いと思います。しかし、「塩漬け」にだけはならない様祈っております。