2025年IT導入補助金とは?基本情報を理解しよう
この記事は、中小企業や個人事業主、NPOや共同組合の関係者向けに書かれています。資本金5,000万円以上又は従業員50名以上の企業の方は業種によっては対象外です。予めご了承下さい。では早速、順を追ってこの補助金の概要をご説明し、全体像を把握して頂く事でこの補助金に関するご理解を深めて頂きます。
2025年IT導入補助金の目的と背景
IT導入補助金という支援策は、企業や個人事業主が最新のITテクノロジーを導入する際に財政的なサポートを受けることができるものです。経済産業省の最新の計画によれば、このIT導入補助金は、他の3つの補助金と合わせて「生産性向上支援」施策として3,400億円の予算が計上されています。

出典:中小企業・小規模事業者向け経済対策・補正予算r6_hosei.pdf(中小企業庁)
中小企業や個人事業主は、この補助金活用により効率的な業務プロセスを実現し競争力を向上させる事が出来るでしょう。また、最新のテクノロジーを活用する事で、新たなビジネスモデルの発展や新たな市場の開拓が可能になるかもしれません。 これからのビジネスを成功させるためには、IT導入補助金の活用が不可欠です。
対象となる企業と事業者の条件

貴方が対象者かどうか最初にご確認ください。
この補助金の対象者は、「中小企業・小規模事業者等」です。ここで云う、中小企業や小規模事業者の定義の詳細はこちらからご確認ください。(IT導入補助金2024公募要領通常枠P-6、2-2-1:「申請の対象となる事業者及び申請の要件」。但しこの資料は2024年のものです。2025年版は公開され次第差し替えます。)
ここで、ご注目頂きたいのは企業や個人事業主以外でもNPOや共同組合でも採択実績がある点です。


出典:IT導入補助金2024公募要領通常枠P-7 it2024_tsuika_koubo_tsujyo.pdf(中小企業庁)
その逆に、資本金が大きい場合や従業員数が多い場合は補助対象から除外されます。具体的な金額や人数は、業種によって異なります。申請準備を進めてから、対象外だと気づくと時間と労力の無駄となりますの最初に上記資料の該当ページをご確認ください。
出典:IT導入補助金2024公募要領通常枠P-6事業内容 it2024_tsuika_koubo_tsujyo.pdf(中小企業庁)
この補助金の給付の仕組み
この補助金支援事業は、製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っている中小企業・小規模事業者等 が、自社の強み・弱みを認識、分析し、生産性向上のためプロセスの改善と効率化に資する方策として、あらかじ め事務局に登録されたITツールを導入する補助事業者に対し、当該ITツールの導入費用の一部を補助するもの です。
メリットとディメリット
この補助金のメリットの一つは、「事業計画書」を作成する必要が無システム画面に必要事項をインプットして行くだけで済む点です。一方、ディメリットは、あらかじ め事務局に登録された「ITツール」と適切な「IT業者」を正しく見つける手間が掛かる事です。また、このカタログ上に貴方の求めるITツールがない場合は、応募が難しくなります。

検索の仕組み
尚2025年版の公募が開始されると、下記のサイトで検索できるようになります。相見積もりを集める際に、どのような取り扱いIT業者がいるかご参照ください。画像は、2024年のページで2025年版は1月10日現在未だカタログの準備中です。

出典:ツール検索先 ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む) | IT導入補助金2024
IT導入補助金を利用できる具体的なソリューション例
申請コースの全容を把握します
2025年の申請コースは全部で5つあります。ただし、企業や個人事業主単独で申請する場合は、「通常枠」と「インボイス対応累計」の2つの枠が大多数です。
残りの3種類の内、2つの累計は相手の組織がいる場合です。複数社連携IT導入枠は商店街など地域ぐるみのプロジェクト対象です。次の、電子取引類型は複数の会社や事業者間でインボイス対応で連携する場合に適用されます。最後の、セキュリティ対策推進枠はサイバーセキュリティ対策を進める際に適用されます。

従って、インボイス登録をしておらず今後もその必要の無い事業者の方は「通常枠」を念頭に置かれると良いと考えます。今後、インボイス登録を検討しているが対応のために必要なITツール導入の補助が必要な事業者は「インボイス対応類型」をご検討ください。
補助上限と補助率
補助額と補助率は、「通常枠」で1~3以上のITツールプロセスに対し、150万円を上限としており補助額は原則1/2です。

出典:2025IT導入補助金チラシ r6_it.pdf(中小企業庁)
一方、インボイス枠の「インボイス対応類型」では、ITツール1機能で50万円、2機能以上で350万円を上限とし、補助率は2/3です。尚、この類型に限りPC・タブレット等の汎用機器につき10万円を限度に補助を受ける事ができます。レジ・券売機等の場合は20万円を上限とします。ちなみに、これらのPC等は何台購入しても全体で10万円のみの補助です。レジ・券売機等も同様で、何台購入しても全部で20万円までの補助です。
具体的なソリューション例
また、経産省が想定しているソリューションの例は、勤怠管理・労務管理ツールの導入(通常枠)や会計ツールの導入(インボイス枠)等です。

出典:2025IT導入補助金チラシ r6_it.pdf(中小企業庁)
2025年IT導入補助金を活用するための準備ステップ
次に、補助金の申請に向けて読者が具体的に何をすれば良いのかを説明します。
ステップー1:自社の課題を洗い出す
最初に自社または自己の事業の経営課題を洗い出します。これは、このIT導入補助金支援策の公募趣旨を振り返る事が助けになります。この補助事業の目的は、「効率的な業務プロセスを実現」「競争力を向上させ」ること、「最新のテクノロジー」を活用することで、「新たなビジネスモデルの発展」や「新たな市場の開拓」をする事となっています。

要約すると、キーワードは、①プロセス効率化、②競争力向上、③テクノロジー導入、④新たなビジネスモデル、⑤新市場開拓、の5つです。これらのキーワードを見て、今のあなたの会社または事業の経営課題が何か思い当たるでしょうか。思い当たった方は、それがこの補助金を活用する大まかなテーマとなります。しかし、思い付かなかった場合は、次のステップで詳細事例と照らし合せると明確になるでしょう。
ステップー2:補助金対象ITツールの詳細分類を知る
次に、これらを具体的なITツールで実現できる業務に当て嵌めてどのITツールによるプロセス業務の改善が最も有効かご検討下さい。

具体的には、あなたの事業のなかで下記の様な業務の効率アップの余地がどこにあるかイメージしながら確認します。
①共通プロセス
業務プロセスの分類 | ITツールを適用する業務 |
顧客対応・販売対応 | MA |
PSA | |
CRM | |
無人受付 | |
決裁・債権債務・資金回収管理 | POS |
EC | |
受注・売上請求管理 | |
供給・在庫・物流 | 入出庫管理 |
納品管理 | |
配送管理 | |
会計・財務・経営 | 管理会計 |
経営分析 | |
経費精算 | |
総務・人事・給与 | |
労務・教育訓練 | |
法務・情報システム |
【用語例】
MA:マーケティングオートメーション
PSA:プロフェッショナル・サービス・オートメーション
CRM:カスタマリレーションマネジメント
POS:Point of Sales (販売時点情報管理)
EC:Electric Commerce (電子商取引)

②業種特化プロセス
業務プロセスの分類 | ITツールを適用する業務 |
建設・土木業 | CAD、図面管理 |
工程・施工管理 | |
飲食業 | セルフオーダーシステム |
レシピ・メニュー管理 | |
保育業 | 見守りシステム |
③汎用プロセス(単独申請できない)
業務プロセスの分類 | ITツールを適用する業務 |
自動化・分析 | OCR |
ワークフロー | |
グループウェア | |
RPA | |
WEB会議 | |
チャットボット | |
BI | |
分析解析専門ツール |
【用語例】
OCR:OCROptical Character Recognition(光学文字認識)
RPA:Robotic Process Automation(業務工程を自動化するロボット)
BI: Business Intelligence( 事業上の意思決定に関わる情報を分析して得られる知見などを活用する仕組)
③ステップー3導入検討のポイント
上記の業務プロセスリスト①②③を眺め、何か馴染のある言葉で以前から導入したかったものが有ったでしょうか。あれば、それがIT導入補助金応募の手掛かりになります。もし、適用業務欄をの中に気になるものが何も無かった場合は、あなたの従事している業種や業態あるいは事業規模がこれらにマッチしていない可能性があります。

その場合は、IT補助金ツール業者からの売り込みに注意が必要です。それは、適切なプロセスであるITツールを導入しても、結局使いこなせずあなたの自己負担分の負債が経営を圧迫する事に繋がる余地があるからです。この様な、懸念が少しでも有ればこの他に複数あるその他の補助金をご利用頂いた方が効率的で有利です。
IT業者の選定基準
業務上の効率化課題が見つかり、その解決策の一つとしてのITツールが特定出来たら次の作業は供給業者探しです。これは「IT事業者」としてIT補助金のサイトに登録されたリストから探します。この時、上記③の汎用プロセス群では、人気のあるITツールは業者によって価格が大幅に異なる事があります。必ず、相見積もりを取るようにしましょう。その逆に、②の業種特化プロセス群では、汎用ツールに比べ登録業者は少なくなるでしょう。そうすると、比較検討の機会が制限されます。その場合は、この②のプロセスに該当するITツールの登録業者選定に、導入によりあなたの事業の売り上げ総利益や営業利益がどういう理由でどの程度向上するのかを訪ねて下さい。その答えを、より明確に言える業者かどうかが選定の判定基準となります。最後に①の共通プロセスの選定が最も高度で困難です。

というのは、これらのITツールはすでにお使いの既存システムとのデータ連携や、業務プロセスの変更を伴う大がかりなものになり易い為です。「IT事業者」が熱心に推奨する新しいツールを導入した為に、全体の業務プロセスとしては却って改悪になり兼ねない様留意が必要です。例えば、給与の自動計算と自動振り込みができるITツールの導入が検討されたとします。「IT事業者」は、あなたの会社や税理士が従っている経理システムや就業規則や年末調整の作成プロセスを深くは知り得ません。すると、給与の計算だけは効率化されたとしても、会計ソフトとのデータ連携や税務署や自治体への法定調書提出で二度手間が生じてしまうと元の木阿弥になります。この点、第三者の専門家に依頼し、貴社や事業プロセス全体の一気通貫したIT診断を実施して、業務体制全体の効率が悪化ない様アドバイスを受ける事も重要です。
ステップー4:IT導入補助金の申請方法+採択率アップの秘訣を知る
申請準備が完了する前に、「どうすれば採択されやすくなるか」という具体的な秘訣と、採択される確率を上げるポイント知っておくことも重要です。採択された企業や事業者の共通点は何でしょう。
採択される企業の共通点とは?
まずは申請枠を正確に理解し、改善目標に合致した適切なコースを選ぶ事です。

- 通常枠ならば、1つ以上の業務プロセスが該当する必要があります。また、4つ以上の業務プロセスが該当すれば、補助上限金額は450万円に上がりますが、補助率は1/2に下がる場合がある点に留意が必要です。
- インボイス枠の場合、これからインボイス対応をする場合とすでにインボイス対応しているが取引先(仕入れ先)の消費税を肩代わりする状況を回避するために、インボイス対応を指導したい場合に使える補助金の2通りがあります。後者の場合、取引先が例えば10社あれば、インボイス制度加入要請の波及効果は10倍です。当然、自社だけの申請枠に比較し採択率はアップします。ただし、取引先との交渉や申請の手間とのバランスも検討しておく必要があります。
- 公募スケジュールを把握し、事前に準備をして置く事も必要です。
- 昨年の通常枠の第一次締め切りは、2024年3月15日(金)17:00締め切りでした。
競争率を突破するための申請戦略
まずは、公募開始後締め切り前迄に速やかに申請するのが最初の「時間との」競争です。それには、公募開始前の下準備を早めに済ませておく必要があります。下準備とは、以下の作業です。
第1回締め切りに応募できれば、採択確率は一定の高さが期待できますので比較的突破可能性は高いと考えられます。
- 初めて申請する場合、GビズIDプライムは事前に登録を済ませて置きます。

GビズID | ご利用ガイド
【GビズID】国(デジタル庁) 公式ウェブサイト https://gbiz-id.go.jp/
- Security Action宣言(自己宣言)を済ませておきます。最初に一つ星宣言を、できれば次に二つ星を申請しましょう。

「一つ星」を宣言する : SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言
- ミラデジで経営課題をチェックし、Gビズに登録しておきます。

審査加点リストの内容を確認しておきます。これは、2025年の補助金公募要領が発表される際に同時に公開されます。募集回が重なって行き、予算が減って来た時期に査定の差がつくのはこの部分です。
ステップー5: IT導入補助金を最大限活用するための活用事例研究
IT導入補助金を活用するための準備ステップの仕上げは、成功事例になるべく多く触れて置く事です。この事例研究で、インスピレーションを受け更に優れた新たな事業展開のヒントを得られるかも知れません。
探し方の手順をお示しする為、幾つかのURLを引用して置きます。出典元情報を参考に、掲載サイトのブックマークを保存し他の事例も参照なさって下さい。
IT導入補助金を活用事例紹介サイト
よくわかるIT導入補助金の「ITツール」
中小企業庁のミラサポプラスのサイトに、貴方にマッチした補助金を検索するサイトが用意されています。
よくわかるIT導入補助金の「ITツール」 | 経済産業省 中小企業庁

事例を探す(事例ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
成功事例①就業管理クラウドサービス導入で
「毎月の給与計算の時間が5分の1以下になりました。事務作業が効率したおかげで、その他の経理業務に時間が割けるようになったことも大きな成果です。(仁科社長)」
補助金の申請事例・IT導入補助金① | 経済産業省 中小企業庁
成功事例② 元請け比率を高めるため、公共工事用の積算システムを導入
建設業で、粗利益率を改善する為にIT導入補助金を活用した事例です。
よくある質問と注意点
審査に落ちるケースとその対策は?
下記の様な稀なケースでは、審査に不合格となる事態が考えられます。そうならない様、申請前に点検しましょう。
- 経営課題の認識に基づき、ITツールによる解決の申請が導き出されて居ない。適用する事業で、①プロセス効率化、②競争力向上、③テクノロジー導入、④新たなビジネスモデル、⑤新市場開拓、のいづれとも関連性がが無い。
- 事業の成長や、生産性向上または労働生産性向上の効果が期待できない。
- インボイス枠を申請したが、インボイス対応要件が欠けている。
補助金利用後の報告義務とは?
採択を受けたIT導入補助金については、3年にわたり結果の報告義務があります。参考までに、2024年の実績報告に関する説明をお示しします。採択時に連絡される、事業報告義務についても熟読しましょう。
⚫ 本事業の通常枠(A・B類型)では、交付決定を受けた補助事業者へ「事業終了後、生産性向 上に係る数値目標に関する情報(売上、原価、従業員数及び就業時間等)及び給与支給総額・ 事業場内最低賃金等を効果報告期間内に報告すること」を義務付けています。
⚫ 効果報告は補助事業者が「申請マイページ」から必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が 「IT事業者ポータル」にて内容を確認したのち、補助事業者が「申請マイページ」から事務局 へ提出を行ってください。

出典:2024年の事業実施効果報告の手引き r4_effect_manual.pdf
どこに相談すれば良いの?
この補助金について詳しい説明を聞きたい場合は、お住まいの近くのよろず相談拠点、商工会、商工会議所、経産省認定経営革新等支援機関(有料)などが相談に乗ってくれます。下記の図で2の具体的な申請は、ITベンダーと一緒に行いますのでITベンダーに問い合わせます。

2025年IT導入補助金まとめ
以上、【2025年IT導入補助金】を効果的に活用する5つのステップを見てきました。如何だったでしょうか?
おそらく、ご同業の業界での実例を参照しご自身の会社や事業形態に照らして「伸びしろのあるプロセス」が何処かを見極めて頂くのが近道かと思います。また、失敗しないためのいくつかの鉄則もあります。以下にお示ししますのでご参照下さい。
- 不要なツールを導入しない
- ITツールありきではなく、事業の課題抽出と解決の成り行きの確からしさの検討が先決問題。
- 自社に検討ノウハウが無い時は専門家に相談する(無料で教えてもらえます)。
- ITツールは、相見積もりを取る。
- 補助金が向かないケース(3選)
- 大至急必要なITツールは、補助金では手遅れになる事があります(2~3か月かかります)。従って、補助金を当てにせず全額自己負担で導入しましょう。
- 副業やサイドビジネスで、この補助金に応募する場合審査に苦戦する可能性があります。別の補助金を検討しましょう。
2025年の補助金は、この他に主要なものでも3つあります。加えて各都府県別にも販路開拓のための補助金公募があります。この記事が、皆様ご自身の事業形態と、拡大目標に最も適した補助金を選定して頂く一助になれば幸いです。
疑問質問がありましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。