最新のiPhoneやiPad、ノートPCを「仕事でも使いたいけど、コストが気になる…」そんな悩みを抱える中小企業・個人事業主の方に朗報です。IT導入補助金では、インボイス登録していないとこれらのデバイスの補助は受けられないのがボトルネックでした。しかし、厚生労働省が提供する「業務改善助成金」ならば、「あなたが特例事業者」である限りは「パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入」や「200万円以下の乗用車や貨物自動車」の購入が認められます。これらの業務用デバイスを最大600万円まで助成金をで導入できるチャンスがあります。この記事では、詳しい資格要件と実際に助成対象となるデバイスの事例や、建設業・小売業・コンサルタント業などでの活用例、申請の流れまでをわかりやすく解説します。
最大600万円!業務改善助成金で人件費アップも設備投資も支援
中小企業・個人事業主でも使える!
厚生労働省が実施している「業務改善助成金」は、最低賃金の引き上げに取り組む中小企業・小規模事業者を対象に、業務効率化にかかる費用を支援してくれる制度です。法人はもちろん、個人事業主やフリーランスでも条件を満たせば申請可能です。その条件とは、「最低賃金の引き上げ」と「業務の効率化に向けた取り組み」。つまり、働き方を良くしながら、設備投資も実現できるというわけです。

出典:令和6年版リーフレットhttps://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001471309.pdf
補助金と助成金の違いは何?
補助金は、申請要件を満たす人の事業計画書その他の内容を比較し優劣をつけて採択されます。これに対して、助成金は申請要件さえ満たせば「審査」なく支給されます。しかし、予算に限界があるので一定の人数迄応募があった所で打ち切られる事があります。要は、助成金は「資格さえあれば」貰えるのです。
どんなときに使える助成金なの?
そもそもこの助成金は、賃上げ促進対策の取り組みです。条件は大きく分けて2つあります。「最低賃金を一定額以上引き上げること」と「業務改善(生産性向上)に取り組むこと」です。この両方を行えば、パソコンやiPadなどのデバイス導入費用も対象になり得ます。
賃上げについて重要な点は、事業場の賃金が地域の最低賃金から50円以上乖離していない事が前提となります。賃上げの比較対象は、事業場内最低賃金と地域別最低賃金です。地域別最低賃金とは、毎年10月頃に発表される各都道府県の最低賃金の事です。

業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
(留意事項)
・事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります。
・労働者(従業員)の事業場内最低賃金を引き上げるための支援制度であるため、労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません。
業務改善助成金の対象事業者及び申請の単位
対象事業者
- 対象者は、中小企業・小規模事業者であることです。
業務改善助成金では、これらのいずれかに該当すれば、助成上限額の拡大・助成対象経費の拡大が受けられます。(助成対象経費の拡大はイのみです。)

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
申請の単位
申請単位は「事業所ごと」の申請になります。裏を返せば、本社が横浜にあり営業所が東京にあれば2か所分申請できるという事です。もちろん、本社機能が東京にあり、全国主要都市の5か所に売り場を展開している事業者であればその拠点の数の6か所分申請出来ます。ただし、その場合の最低賃金の比較対象は、各事業所所在地の都道府県の最低賃金との比較になります。

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
特例事業者とは?
以下のア、イのいずれかに該当する事業者を特例事業者と云います。
ア.賃金要件
事業場内最低賃金が950円未満の事業場に係る申請を行う事業者

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
→助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)が受けられます
イ.物価高騰等要件
原材料費の高騰など社会的・経済的慣行の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3%ポイント以上低下している事業者
※「%ポイント(パーセントポイント)」とは、パーセントで表された2つの数値の差を表す単位です

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
→助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)のほか、助成対象経費の拡大が受けられます
なお、特例事業者のうち、イ物価高騰等要件に該当するものとして申請をする場合は、申請時に事業活動の状況に関する申出書の提出が必要です。
補助額は最大600万円、助成率は?
支給額は引き上げる人数や改善にかける経費額によって異なりますが、最大で600万円まで補助されます。助成率は原則として3/4(一定条件で4/5)と高く、自己負担が比較的少ないのが魅力です。
助成上限額
助成上限額は以下のとおりです。引き上げる最低賃金額及び引き上げる労働者の人数によって助成上限額が変わります。なお、引き上げる労働者の人数の詳しいカウント方法については、以下、<引き上げのルール>又はマニュアルをご参照ください。
(助成上限額の拡大について)
・申請事業場の規模が30人未満であれば、一番右の欄の助成上限額が受けられます。
・特例事業者に該当する場合は、労働者数の「10人以上」の区分を選択できます。(10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合。)

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
助成率
助成率は以下のとおりです。申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって、助成率が変わりますが、概ね70~80%です。
(助成率の拡大について)
・申請事業場の事業場内最低賃金額が900円未満又は900円以上950円未満であれば、3/4より高い助成率が受けられます。
・令和6年度では生産性要件に該当した場合は、( )書きの助成率が適用されました。しかし、令和7年度ではこの「生産性要件」は廃止になる見込みです。

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
今がチャンス、トランプ効果
それは、何故でしょうか?厚労省としては、何としても中小企業や個人事業主に最低賃金を上げて頂きたいのです。しかし、円安進行に端を発しトランプ関税の世界的混乱に至った現在では、企業の収益はますます圧迫されて行く事が予想されます。賃上げのムードは、ここで一気に吹き飛ぶ危機に晒されています。そこで、思い切った特典を増やして後押しをしている訳です。言わば、一時的な助成金のトランプ効果です。

iPhone・iPad・PCは助成対象になるの?
業務用デバイスは「業務改善」の対象?
iPhone、iPad、PCといったデバイスは、業務に活用する目的で購入する場合、業務改善に寄与すると判断されれば助成対象となります。例えば現場報告をデジタル化するためのiPad、クラウド業務に対応するためのノートPCなどが該当します。
但し、ここで留意すべき点は、助成経費が「iPhone、iPad、PC」あるいは「一定額の上昇者や貨物自動車」にまで拡大される条件は「原材料費の高騰など社会的・経済的慣行の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3%ポイント以上低下している事業者(特例事業者)」である事です。しかし、この前年同月比べ3%以上低利益が低下したという条件は、コロナの真っ最中の頃とよく似た要件で多くの方がクリア出来るものです。従って、この様に要件を緩和してGDP減退に備える事が「トランプ効果」なのだと言えます。


実際に申請された活用事例(建設・小売・士業など)
もう一つ忘れてはいけない、大事な要件は業務効率の向上です。設備の導入により、短期的な助成金を獲得できたとしても賃金水準は永続して行きます。従って、設備投資が確実に利益率向上に貢献しなければ経営が立ち行きません。ここが、この業務改善助成金応募時の最大の課題です。賃上げ促進対策の除籍金は、毎年募集がありますが何分「早いもの勝ち」状態ですのでコンスタントに取得する対策も必要です。事例を参考に、慎重にご検討下さい。

出典:業務改善助成金|厚生労働省 HP
デジタルデバイスiPhone、iPad、PCを、事業所に導入する際は下記の様な用途を想定し業務の効率化を目指すと良いでしょう。
- 建設業:iPadで現場報告や図面確認を効率化
- 小売業:POSレジ一体型iPadでレジ業務を簡略化
- 士業:ノートPCやiPhoneでオンライン相談・電子申請を実現
いずれも、最低賃金を上げると同時に、明確な業務改善につながっている点が評価されています。
申請受付開始日は?
2025年の申請は、現在準備中です。

業務改善助成金_個人事業主でも対象になる?注意点まとめ
個人事業主も対象です。一方助成金の一番の難所は、帳簿の整備でこれに一番時間が掛かります。具体的には以下の点が重要です。
- 出勤簿が整備されているか(労働時間の記録が正確か?)
- 労働条件土所は整備されているか(記載漏れや不整合は無いか?)
- 賃金台帳は問題無いか(未払残業代など)
- 就業規則は整備されているか(10人未満の会社でも助成金申請には必要)
また、iPhone、iPad、PC購入の助成を受ける場合は、機器購入が私的利用ではなく業務目的であることを明確にするため、見積書・カタログ・導入目的を資料として添えると安心です。

申請の流れと必要な準備
ステップ① 賃金引き上げ計画の立案
まずは、現在の従業員の賃金と地域の最低賃金を確認し、何円引き上げるかを計画します。対象となるのは、最低賃金付近で雇用されている従業員です。
ステップ② 業務改善計画の作成と申請書類
賃上げとともに行う業務改善(例:タブレット導入で業務の効率化など)を計画書としてまとめます。機器の見積書、導入目的の記述、写真等も用意しましょう。
ステップ③ 実施→報告→補助金の受給までの流れ
申請が通れば、計画通りに機器を購入・導入し、賃金を引き上げて業務改善を実施。その後、実施内容と支払い証明を報告すれば、補助金が支給されます。
よくある質問と失敗しないポイント
Apple製品ってホントに通る?
Apple製品も「業務用」として購入すれば問題ありません。家電量販店の領収書やWebショップのスクリーンショットに加え、業務活用の説明資料を添えると安心です。また、助成金の交付決定を受ける前に納品されると助成金が受けられなくなりますのでご留意ください。
助成金が通らないNGパターン
- 基準となる従業員(最低1人)が3ヶ月以上就業していない
- 会社が労働保険を付保していない
- 雇用保険加入義務のある従業員がに保険を掛けていない
- デバイスの個人利用が疑われる(私物兼用)
- 賃上げの証明が不十分
- 領収書・報告書類の不備
- 実施前に購入してしまった(事前着手)

専門家に頼むべき?自力でもいける?
出勤簿や賃金台帳及び就業規則が整備されていれば、自力で申請も可能です。しかし、書類の整備やタイミングが難しい部分もあるため、初めての方は社労士や経営革新等認定支援機関そのたの助成金コンサルタントへの相談も有効です。特に、最もハードルが高いのは帳簿の整理と事業所賃金の集計及び終業規則の規定内容の点検です。これは、最初の年に整理できれば2年目以降の申請が楽になります。思い切って、助成金に対応できる社労士や専門家と相談して着手してみてはいかがでしょう?
まとめ:業務効率化もデバイス導入も“賃上げ支援”で実現しよう
助成金を使って「欲しかったあの機器」を手に入れるチャンス!
最新のiPhoneやiPad、ノートPCを業務用に導入することで、生産性を高め、働きやすい環境を整えることができます。助成金を活用すれば、自己負担を大きく抑えながらこれらの設備投資が可能になります。
まずは専門家に相談 or 自分で情報収集を始めよう
申請にはタイミングや資料準備が重要です。制度が続いている今のうちに、まずは制度の詳細をチェックし、自社・自営業の状況に合うかどうかを確認してみましょう。
