建てたい。でも資金が足りない」そんな成長企業の夢を、国が本気で後押ししてくれる時代が来ました。2025年からスタートした「中小企業成長加速化補助金」は、売上10億円以上など一定の成長性を持つ中小企業が、オフィスビルや拠点建設など大規模な投資を行う際に、最大5億円の補助を受けられる大型制度です。
対象は製造業だけではありません。解体業、建設業、サービス業など、地域で実績を積み重ねてきた中小企業にも門戸が開かれています。「いよいよ自社ビルを」と考えている経営者の方へ――補助金を活用して、夢を確実な計画へと変えるための手順とポイントをご紹介します。
中小企業成長加速化補助金とは?
制度の概要と創設背景
「中小企業成長加速化補助金」は、経済産業省の支援により2025年から始まった新しい補助金制度です。売上10億円以上の中小企業で、今後「売上100億円以上の企業」になる事を宣言した法人に対し、大規模な設備投資や建物建設を支援することを目的としています。特に「今後の成長」を見据えた取り組みが評価されます。

出典:概要チラシ
他の補助金との違い
事業再構築補助金やものづくり補助金との最大の違いは、「補助額の大きさ」と「建物建設が対象に含まれる点」です。最大補助額上限はなんと5億円。補助率は原則1/2です。これにより、事業拠点や自社ビルの建設も現実的に補助対象となります。
申請できる中小企業の要件とは?
以下の①~④のいずれも満たす中小企業者であって、事業終了後の建物・設備等の管理・ 運営等に責任を持って実施することができる中小企業者。
①1億円以上の投資をする事(税抜き
②100億宣言がサイトに公表されていること
③5年間程度の賃上げ計画を策定しそれを満たす事
④日本国内に置いて補助事業を実施する事

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
100億円宣言とは?
中小企業の経営者の皆様が「売上高100億円」という目標を目指し、実現に向けた取組 を行っていくことを宣言するものです。詳細は下記HPをご参照ください。


出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
建設費は補助対象?どこまで対象になるのか
建物建設費はOK、土地はNG
補助対象となるのは「建物本体の建設費用」。設計・監理・構造設計・確認申請などの付帯費用も対象です。一方で、土地の購入費用や既存建物の解体費は補助対象外となっているため、自己資金や融資での手当が必要です。

出典:中小企業成長加速化補助金 (1 次公募) 公募要領

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
建設BIMの導入は先進性として評価される_その訳は?
BIM(Building Information Modeling)は、建築設計・積算精度向上・効率化の観点で非常に評価される投資です。専用PCやBIMソフトの導入も「成長を支える先端設備」として申請に含めることが可能です。
✅ なぜ補助金の審査でもBIM活用が有利なのか?
- DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上という観点で、BIMは非常に評価されやすい技術です。
- 例えば、解体業は建設業界の中でもまだDXが進んでいない分野の一つとされており、そこに先行的にBIMを取り入れることは高評価要素です。
✅ BIMの主な特徴
一般的には、土木・建築分野の構造設計や積算の際下記の様な機能で威力を発揮します。
項目 | 内容 |
📐 3D設計 | 建物を2D図面ではなく3Dモデルで設計・表示する |
🧠 情報統合 | 図面、構造、材料、工程、コスト、維持管理情報などを1つのモデルに集約 |
🔄 情報連携 | 設計者・施工者・設備業者・発注者が共通のモデルで協業可能になる |
📉 工程・コストの最適化 | 工事の手戻り防止、数量算出自動化、施工ミス削減が期待できる |

✅ 解体業におけるBIMの活用ポイント
しかし、BIMは「新築建設」だけでなく、解体業においても非常に有効になってきています。
◉ 解体業でのBIM活用の例:
活用場面 | BIMの効果 |
🧱 解体前調査 | 建物構造・寸法・使用材料・危険物の把握(アスベストなど) |
📊 工程管理 | 解体順序や重機導線の事前シミュレーション |
📦 産廃分別 | 発生材の種類・量の推定と分別計画 |
🤝 元請連携 | 設計者・ゼネコンとBIMモデルを共有して安全計画を立てる |

補助金活用で自社ビルを建てる際の要件と注意点
売上10億円超は前提、利益と成長戦略も問われる
この補助金は、「規模はあるが次のステージへ進む投資」が対象です。売上10億円超の実績や、営業利益の伸長、今後の成長戦略(人員増・新サービス導入等)を明示する必要があります。例えば、申請の審査途上で使う提出資料の項目には、以下の計画を明記する様になって居ます。
①経営力について
経営力(ア)/売上高100億円ビジョン
経営力(ア)/100億宣言
経営力(ア)/補助事業の概要
経営力(ア)/売上高成長率
経営力(ア)/付加価値増加率
経営力(ア)/投資の規模
経営力(イ)/外部環境
経営力(イ)/内部環境
経営力(イ)/外部環境、内部環境を踏まえた差別化戦略
経営力(ウ)/管理体制
経営力(エ)/コンソーシアム
②波及効果について
波及効果(ア)/賃上げ計画
波及効果(イ)/参加企業や地域企業への波及効果
波及効果(ウ)/地域のモデル企業
③実現可能性について
実現可能性(ア)/実施体制
実現可能性(ア)/スケジュール
実現可能性(ア)/実施上の課題
実現可能性(イ)/財務状況

審査方法と基準
ここで、審査基準を概観しておくと今後の参考となると思われます。
審査は、2段階で行われます。最初は書類審査で、それが通ると面談審査があります。今回の、第1回募集ではそれぞれ7月上旬と9月上旬以降が予定されています。1次審査は主に形式審査です。

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
2次審査では、経営者による「投資計画書」の内容に関するプレゼンテーションと質疑応答が要求されています。

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
その際の、審査基準は①経営力、②波及効果、③実現可能性、が問われることになります。

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
提出書類
尚、申請に必要な書類は、以下の通りです。投資計画書(様式1・様式2)、ローカルベンチマーク(様式3)、決算書3期分、金融機関による確認書(様式4)。その他に、リースを組む場合は様式5及び様式6などです。

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
解体業など非製造業でも採択のチャンスあり
解体業や建設業といった「サービス業的要素の強い業種」でも、資材置き場や管理部門の拡張、労働環境の改善、安全対策強化など「成長のインフラ整備」であると説得力を持たせれば、十分に採択の可能性はあります。
補助金を使ったビル建設の具体的な活用例
- 資材置き場併設の自社ビル建設
- BIM導入による業務効率化+オフィスの近代化
- 省エネ仕様の社屋でSDGs対応&公共案件での信頼向上
このように、単なる建設ではなく「成長に必要な基盤づくり」として位置付けられる投資であれば、十分な申請理由になります。

資金調達はどうする?補助金+融資の現実的スキーム
補助金は「後払い」であるため、初期費用は自己資金や融資で手当てする必要があります。
そして、申請添付書類の一つとして【「中小企業成長加速化補助金」に係る金融機関による確認書】という文書を発行して貰う必要があります。その為には、有利な金利で資金調達をする事も事業成功のポイントの一つです。
信用保証付き融資だけの企業でも可能か?
はい、可能です。ただし、金融機関から「プロパーでの一部融資」「保証協会の枠の余力」などが問われるケースもあります。補助金採択後は金融機関の態度も変わる可能性があるため、事前に交渉しておくことが重要です。
資金調達はどうする?補助金+融資の現実的スキーム
補助金は「後払い」であるため、総工費と関連費用の全てはまず自社で建て替えとなります。言い換えれば、補助金受給予定額及び消費税をすべて、自己資金や融資で手当てする必要があります。
そして、申請添付書類の一つとして【「中小企業成長加速化補助金」に係る金融機関による確認書】という(4号様式と呼ばれる)文書を発行して貰う必要があります。その為には、有利な金利で資金調達をする事も事業成功のポイントの一つです。そして、どの金融機関に相談するかは検討を要する所です。
信用保証付き融資だけの企業でも可能か?
はい、可能です。ただし、金融機関から「プロパーでの一部融資」「保証協会の枠の余力」などが問われるケースもあります。補助金採択後は金融機関の態度も変わる可能性があるため、事前に交渉しておくことが重要です。

日本政策金融公庫に申し込むには?
最も有利な金利での融資が期待できるのは日本政策金融公庫です。
以下の点を事前に整えておきましょう:
- 明確な建設計画(スケジュール・図面・資金計画)
- 補助金の申請書(ドラフト段階でも良い)
- 過去3期分の決算書(債務状況の説明も)
- 自己資金の比率と資金繰り表

リスクに備える3つの対策
見積取得時に余裕を持たせる(予備費設定)
建設業者に精度の高い積算をお願いし契約金がくを正確に算定する他に、契約条件にも誰のリスクでコスト超過や納期遅れの損害をカバーするのかを明確にして置く事をお薦めします。また、それとは別に社内的に予備費を準備する工夫を考えて置きましょう。有事の際、使える内部留保の現金です。
金融機関と追加融資枠を事前に調整しておく
それには、金融機関との間で資金のコンティンジェンシープランを打合せ合意して置く事が重要です。コンティンジェンシープランについては、認定支援機関の顧問税理士や顧問弁護士に相談すれば相談に乗ってくれます。もしお困りの時は、当事務所にご連絡ください。
計画変更時に備えた「柔軟な工程表」を用意
補助金の変更申請(計画変更)には時間と手続きが必要なため、早めの動きが鍵になります。特に、通常業務を抱えたまま、新築工事プロジェクトでトラブルが起きると社内の別部門まで波及しかねません。組織体制と、協力体制など組織としての対応計画を工程計画策定と計画日程維持の施策を施工会社に契約前に明確化し、社内の複数の目で査定しましょう。
申請から建設完了までの流れとスケジュール感
- 顧問税理士・中小企業診士・認定支援機関などに計画の構想について相談する
- メインバンク又は他の金融機関との借入相談(4号様式発行)
- 用地と建築物件に関するニーズと移転時の業務インパクトの検討
- 補助金申請の相談窓口訪問、月次決算等必要資料集計体制の整備
- 事前準備(ローカルベンチマーキング診断・パートナー選定・概算見積入手)
- 申請書作成・公募申請(電子申請)
- 審査(約2ヶ月)、自身によるスライドプレゼンテーション→採択結果
- 交付申請・契約・着工
- 実績報告→補助金支払い
全体として、1年~1年半程度のスケジュールを見込んで動く必要があります。
成長加速化補助金を使ったビル建設の成功ポイント
- 「成長に必要な設備」と明確に位置づける
- 金融機関・設計事務所・行政書士(経営革新等支援機関)との連携体制
- 事業継続性と地域貢献性を説明する
- 対象となる経費と除外される経費を明確に理解して置く

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料

出典:中小企業成長加速化補助金 説明会資料2025年4月25日 説明会資料
まとめ|補助金で“夢の自社ビル”を実現しよう
いま、自社ビルを建てたいと考えている中小企業にとって、これほど現実的なチャンスは他にありません。「建てたい。でも資金が…」と悩んでいた方は、今こそ行動するタイミングです。
今すぐやるべき3つの準備
とは言っても、これまでご紹介して来たように、最後は経営者がプレゼンテーションを行い質疑応答を受けなければいけません。誰かに、任せて済む問題ではありません。従って、仮に第1次公募に間に合わなくても惜しくない程の用意周到さが必要となります。まずは、以下の3項目について点検し足元を固めてはいかがでしょう?むろん、既に申請書に取り掛かっておいでの方はこの辺りは問題ないと思いますが、念の為再点検をお薦めします。
①リアルタイムの会計記帳体制の整備
②自己資金の確認と長期借入金の返済計画見直し
③不要な固定資産の処分
診断・相談窓口の活用
不動産売買や建設工事と、補助金申請手続きとの間にはあるジレンマが生じます。それは、良い物件は奪い合いになる為融資が付いた買主から先に取得してしまう事です。その逆に、好物件の購入予約をしたとしても、補助金採択が決まり補助事業が着手可能となるまでに半年程度時間がかかります。一方で、資金計画や申請資料がどの様に完璧に整っていても、肝心の用地買収や建設会社との打合せが不十分であると、投資計画自体に狂いが生じます。従って、この両者は並行して綿密に準備を進めて行く必要があります。
それには、自治体や公共機関用意した相談窓口を活用する事をお薦めします。

採択を勝ち取るための最後のチェックリスト
まずは、事業計画の骨子を整理し、活用できる制度か無料診断から始めてみてください。そして、自社の事業内容を客観的に理解する為ローカルベンチマーキングを行いのデータを入手しましょう。その上で、貸借対照表や固定資産台帳或いは長期借入金の返済計画書を分析しましょう。その結果、あと少し資金の補充が得られれば自社ビルが無理なく建つという見解を、複数の専門家から貰えれば準備の予備段階に進めます。

ローカルベンチマーク|経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus
しかし、もし自社ビル建設の内部留保資金がゼロであり、全額借入をお考えであれば時期尚早かもしれません。企業個々の事業特質や、採算性にも依りますので予め顧問税理士や会計士または中小企業診断士などに相談し、自己資金と借入れ工事資金比率及び概算総工費見積との比較によるリスク査定をお願いして置きましょう。
あくまで一般論ですが、通常操業であれば円満に安定成長している企業も、補助金を受けた為にリソースや運転資金に誤算が生じ窮境状態に至るケースが多くあります。また、補助金を受けた多くの方から「採択されるまではある程度進めるが、実際に支払いを受けるのは至難の業だ」という生の声もお聞きします。
まずは、専門家チームによる申請支援や金融機関交渉の伴走の説明を受け中期計画を立てる所から始めましょう。
何か、お困りの際は当オフィスでも相談をお受けします。