すでに多くの方が、小規模事業者持続化補助金の申請に取り組まれた事と思います。第17回募集の<一般型>の申請に必要な、事業支援計画(様式4)の発行を依頼する為商工会議所の面談に行って来ました。この補助金の申請作業を進める中では、「思ったより手間がかかる」「制度の説明と実態がズレている」と感じる場面がいくつもありました。一方、商工会議所ではかなり丁寧なアドバイスを頂き「補助金の活用意義」そのものを見直すヒントを貰いました。また、面談予約に必要なシステム不具合点など今年の申請を経験して初めて解る事もありました。改めて申請書を仕上げるにあたり、収益納付の定義、添付書類の形式など、申請前に知っておけば混乱しなかったであろう点が数多く存在します。この記事では、申請直前の体験者として、これから申請する皆さんに役立つ「5つの注意点」をわかりやすく解説し皆様の最終点検に約立てて頂ければと思います。

持続化補助金申請の概要と対象者の確認

小規模事業者持続化補助金<一般型>とは

小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁が主導する制度で、販路開拓や業務効率化などの経営改善に取り組む小規模事業者を支援する補助金です。<一般型>は最も基本的な区分で、商工会または商工会議所の支援を受けて取り組むことが前提となっています。

申請できる事業者の条件と対象経費

対象となるのは、業種ごとの従業員数要件を満たす小規模事業者です。経費区分には「広報費」「ウェブサイト関連費」「機械装置等費」などがあり、上限は通常50万円〜200万円(補助率2/3)です。

出典:小規模事業者持続化補助金チラシ

持続化補助金申請の申請前に整えておくべき書類と疑問点

出典:申請システム操作手引き 第17回 公募申請 (商工会議所地区) 

確定申告書・決算書の用意と注意点

個人事業主の場合、「確定申告書第一表・第二表」「青色申告決算書1〜4面」の添付が必須です。そして、確定申告書は税務署の受付日時と受付番号がヘッダーに記載sされたもの又は受付印がある控えがお薦めです。そして、申請システム入力の際はこれらの書類に掲載された数字と整合させます。公募要領に具体的な指示はありませんが、誤った書類を添付し却下される事を予防する自己防衛策です。

印鑑証明書の住所と法人登記との一致確認

法人の場合、印鑑証明書の記載住所と登記簿上の本店住所が一致している必要があります。思わぬ差異で、再取得になるケースもあるため事前の確認が重要です。

添付ファイルはPDF分割すべき?統合でも可?

税務署の受領記録のヘッダー記録があるファイルを使う場合、「確定申告書第一表・第二表」「青色申告決算書1〜4面」は同一のPDFファイルとなって居ます。提出用にPDFで添付する場合、1ファイルで統合して問題ないケースもありますが、システム上は書類ごとのアップロードが求められます。公簿要領の26ページに添付書類のファイル名の命名規則が載っています。それには、「確定申告書(事業者名)」又は初回決算前の創業したての事業者は「開業届(事業者)、売上台帳(事業者)」というファイル名でアップロードするよう指示があります。問題は、申請システムのアップロード先の窓は3カ所あります。申請後の手戻りや問合せ回答等の手間を省く為には、事前にファイルを3分割しておき必要なページのみ再編集して置くと安心です。

出典:公募要領26ページ

業種分類と事業内容の適合性をどう書くか

日本標準産業分類と照らし合わせて自社の業種を明確に記載し、事業内容との整合性を持たせることが採択の基本です。あいまいな表現は評価者に誤解を与えるリスクがあります。

持続化補助金申請の商工会議所との連携と「様式4」の壁

上記の、「申請情報入力の流れ」の様式2の作成方法については以前の投稿記事で解説しました。次の山場は、その内容の客観的なチェックです。その、簡単な予備審査に合格すると貰えるのが「様式4」です。様式4の外観は下記の様になって居ますが、これが無いと申請が出来ません。

様式4のサンプル

発行依頼には面談必須!準備しておくべきこと

「様式4(事業支援計画書)」の発行には、事前に商工会議所との面談が必要です。各地域の商工会や小会議所管轄窓口の指示に従い、事業内容、補助対象経費、スケジュールなどを簡潔に説明できる資料を持参しましょう。今回事前に準備を指示された資料は、申請画面の全てをブラウーザーのプリント機能により、PDFファイルにした後それを2セットプリントして持参する事でした。実際には、このブラウザーによるPDF化の工程に手間取りました。A4サイズの紙にプリントしようとすると、中央に紙面の1/3程度の幅で細長く印字され25ページに渡ります。そこで、横置き2アップ配置にして1枚に2画面づつ配置して13頁のプリントアウトを2セット用意しました。

出典:第17回事業者向け公募申請手引き_2_商工会地区.pdf

商工会議所との面談で実際に聞かれた質問とは

今回筆者は、東京商工会議所の杉並支部で面談を受けました。実は、あるハプニングがあり私の予約はシステムに登録されて居ませんでした。約束の11時少し前に訪問した所、受付で予約履歴がない模様で色々調べてくれた後、バックアップのスタッフが快く対応してくれました。指定されていた、申請書のPDFファイル2部を提出すると15分程度で全て読み込んだ後以下のご質問を頂きました。

  • 質問された事項
    補助事業実施期間を10か月と書いたのに対し、開始月が8月で終了月が3月(8か月間しかない)になっていた。「期間と終了月のどちらに整合しますか?」というご指摘でした。
  • アドバイス
    PC画面で応募要領22頁の9節の「補助事業実施期間」を提示して終了期限が2026年7月31日である事を丁寧に説明してくれました。それを踏まえ、「8月開始で6月終了の10か月間」に整合する事にしました。
  • 補正内容
    相談窓口の席上では、提出した控えにその様に朱書き訂正して頂き、「ではこれで、受理します」との回答を得ました。

補この後、様式4の発行依頼をこちら商工会議所のPC画面上で入力し送信しました。その結果、持ち時間よりも15分以上追加の時間を割いて頂き、別の重要なアドバイスも貰え無事面談は終了しました。別の、裏話の情報は改めて述べます。 

面談予約システムの不具合とあなたが回避する方法

筆者は、以前「事業復活支援金」という補助金の「事前確認」という作業の支援をお手伝いした経験があります。今回の様な、申請希望者の身元確認と申請要件の妥当性点検がその主な任務でした。今回の、商工会や商工会議所による様式4の発行というステップも類似のタスクがあると思います。

先ずは、面談の前の週に予約を取る作業をしました。商工会議所の連絡先一覧が、持続化補助金ホームページ上に見当たらないので下記のヘルプデスクに問い合わせました。すると、リンクは「公募要領の表紙に埋め込まれたURL」だとの案内でした。しかも、このヘルプデスクは制度の概要のみを案内する担当なので、詳細は全て管轄の商工会か商工会議所に問い合わせて欲しいとの事でした。

出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>

筆者の居住地域は、東京商工会議所管轄なので、商工会議所のホームページを探すと各支部の連絡先一覧表があります。そこから、杉並支部を選び支部のホームページに入りました。すると、下記の画面が出ました。つぎに、水色のボタンが二つあるので上のボタンをクリックしました。

すると、以下の画面に遷移しました。

念のため、下のボタンもクックすると下記の様な同様の画面に遷移しました。

そして、どちらの画面も、何処をクリックしようとしても何の反応も有りません。そこで、同支部に電話し相談しました。すると、「貴方のPC環境の不具合かも知れません。スマホでお試しください。」というご案内が有りました。そこで、スマホとiPadで試しましたが結果は同じでした。面談予約は、電話では受け付けないとの事なので、システム不具合の為「今年の持続化補助金は申請出来そうもないな」と諦めかけました。

皆様は、上記の画面で何がおかしいかお気づきでしょうか?通常この様な画面は、IT業者が以下の様に作り込みお客様の代表者が実際に動かし➡承認して引渡しを承諾し➡支払い手続きとなります。その際、ユーザー受入テストではあらゆる挙動を想定しテストプランを作成するのが「通常のIT業者」の義務であり、それを(極力システムに不慣れな方の想定の)ユーザー目線で検討し直し抜け漏れが無いか調べるのは「ユーザー側」の責務です。但し、コスト節減目的で内製している場合はその限りではありません。 

実際には、これらの画面には3つの不備が隠れており、その為に大勢の申請希望者の望みが絶たれた可能性があります。

3つの問題点

それは:
問題点①
予約をする画面に、空きがあるのか予約が埋まっているのかが明らかにされて居ません。
良い例(港支部):
下記の画面は、港区の支部が適切に作り込み公開して居られる画面の様子です。末尾に、記号の凡例があります。また、カレン―の中にはX印が表示されているので「予約出来ません」の状態であることが判ります。通常は、たとえ素人が作成するHP画面でもこの程度は表示します。 

問題点②
また、予約枠が残って居ないならば、混乱を避ける為カレンダー画面に遷移できないようにインターロックを掛けます。
良い例(練馬支部):
下記は、練馬支部ではこの点を適切に対策している画面の様子です。「予約枠が満席となりました」の水色のボタンは、何度クリックしてもカレンダーに遷移できない様に適切にリンクを切断してあります。 

問題点③
もし、システムトラブルその他で自動予約システムがうまく作動しないのであれば、バックアップの申込手段を予め決めて置く必要があります。申請には期限があり、このシステムがそのボトルネックとなれば持続化補助金に計上された国家予算が民に届かなくなり無駄になってしまう懸念がある為です。
良い例(世田谷支部):
下記は、そのバックアッププランを意識して明確に転送先を示した世田谷支部のホームページの様子です。同支部への問い合わせは電話に限る事、そのたの対応は「東京持続化発行センター」という外注組織が請け負っているのでそちらのシステムを利用して欲しい旨が宣言してあるので、混乱の余地がなく申請希望者が無駄な時間を浪費する懸念が一切ありません。

前述の通り、多くの希望者が短期間に集中します。この様な事前確認作業は大変な労力が必要とされるもので、上記の不具合がある各支部の懇切丁寧な対応をして下さるスタッフの皆様を決して非難する意図は全く在りません。
しかし、今回の問題点は、この予約システムの残念な現象が23区内全域の実に60%の支部という広範な範囲で発生している事です。各支部の面談対応実務者側の皆様もシステム構築者を信じ切って居れば、不具合の問い合わせが来ても予約ウェブ画面を開発したご担当ではない為「ユーザー側のPCの肝要設定やブラウザーが悪いのだろう」などと考えるのも無理からぬことです。因みに、筆者はあるメガファーマ勤務時代にコンピュータシステムバリデーション(CSV)というITシステム構築時のリアルタイム監査を専門とし居ました。

Webシステム標準開発手順(CSV)

その視点で見ると、今回の現象の原因は明らかにカレンダー画面開発時のミスでは無いかという印象を持ちます。是非、次回募集までには改善される事を期待します。一方、予約システムに頼らず電話で一切「混乱もなく」の相談業務を遂行して居られる支部も多数あり確実性の観点ではこちらの方が優れています。 
下記の、表はには今回の様式4の発行プロセスの内、面談予約で申請者の混乱を一切招く余地の無かった支部のご対応状況の概要です。システム構築面では、港区・練馬区・大田区が、完璧なIT技術力や知見が組織内に備わって居る事が窺えます。

23支部の相談窓口対応体制は、9/23=39%のみが問題無く運用できる体制(当オフィス検証)

以上の9支部では、適切な予約システムの導入により今回の混乱を完全に回避できています。しかし、残る14支部では冒頭指摘した画面をそのまま流用しており「混乱」や「泣き寝入り」を招いた余地が否定できません。渋谷支部では、かなり懇切丁寧な注意書きが記載されていまいたが、残念ながら肝心の「カレンダーがブランクになって居る状態の説明」が欠落して居ました。詳細のご事情は、外部からは一切解りませんが、何処かで予約画面モジュールを作成し、それをそのまま14支部に支給した上、何の検証もせずプロダクションサーバー環境に導入して現在も「不具合」に気付いてない可能性が高いと考えられます。商工会議所全体の統一性や、支部相互の情報交換はIT対応に限っては実現できていない可能性が窺えます。

事務局の案内を鵜呑みにしてはいけない?もう一言の質問を

一方で、この補助金のホープページにある事務局の問合せ回答にも留意する必要があります。上記で述べた通り、面談予約の問合せ先を探す際にヘルプデスクに電話した際、「このヘルプセスクの所掌範囲は補助金制度全体の概要説明であり、様式4号などの詳細は地元の商工会議所の支部で確認して下さいと」との事でした。

出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>

此処に、連携の不備による落とし穴が有りました。実は、居住地域の支部への問い合わせは第一選択である事に間違いは無いのですが、東京持続化センターに申請するという第二の選択肢も有ったのです。当然地域の商工会・商工会議所は、地元の申請希望者を「優先的且つ独占的に当支部で全て対応します」という意気込みでいらっしゃると思います。しかし実は、東京商工会議所では各支部のキャパシティーオーバー対策の為外注契約先を用意してあり態々足を運ばなくてもリモート会議で様式4の申請面談が出来る場合もあるのです。

出典:【形式確認(様式4発行)のご案内】|東京持続化発行センター

最も優秀なヘルプデスクは、訊かれた事には適切に答え聞かれない事には一切触れず即座に次のコールを受ける事に専念します。そこで、申請希望者側から是非もう一言呟いてください。「地元の支部に行く以外に、何か手立ては無いのでしょうか?」と。先ずは、この商工会議所本部の予約枠を押さえ、準備が間に合いそうも無い時はそれを即座にキャンセルしあなたの枠を解放しましょう。これを知らないと、「様式4」の壁に阻まれ申請を諦める事になります。

持続化補助金申請の補助対象経費の配分と費用対効果

補助金の1/4制約とは?予算配分の実情

補助金申請では、ウェブサイト関連費および広告宣伝費の合計は、補助対象経費の1/4以内に収めなければならないという制約があります。全体で、60万円の補助事業費であれば、15万円までが上限です。この制限の中で、チラシ作成費、QRコード付き専用サイト制作、リスティング広告の配分をどう最適化するかが大きな悩みとなりました。制作業者とのやりとりでは、事前に単価設定や納期調整によって見積書を補助金仕様に合わせる工夫を行いました。

出典:第17回事業者向け公募申請手引き_2_商工会地区.pdf

実際に計上した経費と見積もりの工夫

筆者の場合、チラシ印刷・郵送(3,000部)を中心に、チラシに対応する専用ホームページの新設とSNS広告費を合わせて13万円分計上しました。ここでまず感じたのは、ホームページは5万円から50万まで様々な製作方法がありますが、リスティング広告やSNS広告月付き5万円以上はかかり10か月継続するとそれだけで50万円掛かっています。

また、SEOコンサルティングにもそれ以上のコストが掛かります。尚、補助事業を開始し清算する際には、見積書・発注書・納品書・請求書・領収書などが必要になります。従って、ここで計上するホームページ申請費用もいづれ見積もりが必要となります。しかし、現段階では時間単価と開発工数の時間を申請書の予算表に記述して置きます。

出典:第17回事業者向け公募申請手引き_2_商工会地区.pdf

チラシ効果は未知数?QRコードで反応率を検証

補助金申請時には、販促活動の成果を確約することはできません。そこで、取りあえずの対策としてチラシに専用サイトのQRコードを掲載し、アクセス数をGoogle Analyticsで計測。反応率を可視化して、補助金事業の有効性を証明する根拠とする方針としました。米国のマーケティングのジョークに「広告費の半分は無駄だと知っているが、問題はどちらの半分かが解らない事だ」と云うのが有ります。チラシ3,000部を配布して果たしてどの程度の効果があるのだろうかという疑問は払拭できません。

補助金の性質と効果

申請書作成時に、多くの方が「本当にそんな効果が期待できるのか」という疑問を感じると思います。それは、売れるに決まっていると確信できる物品の販売であれば、広く宣伝すればするほど売れると確信するでしょう。しかし、その費用対効果の比率は製品に新規性がある程誰にも分かりません。また、その比率が解る製品やサービスは、前例が多く存在するから取れる統計値でありその時点で陳腐化しているとも言えます。

効果は不明

そこで、面談中にアドバイス頂いた事は、各補助金の目的を考える事に加えて対象業種も分析する事です。例えば、今年の補助金に共通した支援テーマは、「生産性向上」と「賃上げ」の促進です。そして、目的別には「販路開拓」「業務効率化」「設備投資」「事業承継」などが現在主流の補助金です。しかし、これの個々の目的別補助金も、全ての業種に対応しているとは限らないのです。

特に、この補助金はどの業種の支援を対象に設定されているのでしょうか?先ず、製造業は最も多くの補助金が支援を想定しています。具体的には、「小規模事業者持続化補助金」・「新事業進出補助金」・「IT導入補助金」・「中小企業省力化投資補助金」・「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」・「中小企業成長加速化補助金」・「新事業進出補助金」・「事業承継・M&A補助金」の、8種類全てが当てはまります。

出典:最新の補助金情報 | 補助金活用ナビ(中小機構)

また飲食店などのサービス業も、投資規模にもよりますが多くの補助金に向いています。しかし、コンサルタント業や学習塾などの知的な生産活動を営む目に見えないバリューを提供する業種は補助金を慎重に選別して応募する必要があります。

向き不向きは、申請書の中に登場する「補助事業の期待効果とその理由」を各時点で自ずから解ります。たとえば、製造業の現場に鋳物を自動加工するNC旋盤を導入する補助計画を書くとします。単位時間当たり処理できる部材加工の数量は、メーカーのカタログ上の性能データから算定できます。それを、従来の手仕事のデータと比較すると生産性向上率が、数字で把握できます。それが、無駄かもしれない広告と決定的に異なる点です。従って、この様なデータが示せる申請書は採択される可能性が上がる一方で、コンサルタント業の拡販などは、期待可能性は説得力に欠け却下の確立が上がる事になります。

持続化補助金申請の申請書作成時に悩んだポイントとその対策

最初にSWOT分析をすませた

最初の山場は、「経営計画入力」の【概要】【現在の売上・利益の状況】に続く【経営課題】客観的に洗い出す事です。筆者は、最初にSWAT分析をしました。分析に過剰な詳細はいらず、事業の方向性を示す道具として使うことが大切です。

内部環境強み(活かすべき自社内の強み)弱み(障害となり克服すべき自社内の弱み)
 ITシステム製作の品質保証職実績とIT監査実施経験 ITセキュリティ管理担当の経験と知識 MBAで習得したマーケティングの知見 行政書士業務で習得した建設業顧客法務対応経験 経営革新等支援機関論理・実践研修の財務会計知識新規顧客開拓の資金源が乏しい 業務の効率化が遅れている 建設業の人脈が乏しい コロナ禍最中のスタートで士業の人脈が希薄 中小建設業客開拓の有効な方法が解らない
外部環境機会(市場での競合優位性などプラス要素)脅威(市場縮小や競合激化などマイナス要素)
 建設業許可新規取得と廃業数が拮抗(申請需要増)  各省庁と地方自治体のデジタル化への移行要求圧力 2025年は補助金の種類が増え複雑化している 認定経営革新等支援機関業務の承継補助金人気上昇 中小企業経営者高齢化で廃業対応案件増加顧客層の経営環境の悪化 (ウッドショック、円安、資材高騰、高齢化、人手不足、事務職が集まらす経理業務停滞、働き方改革と社会保険制度改定がコストを増やしている)

パークRMCオフィスのSWOT分析

市場動向とSTP分析をどう定めたか

つぎに、上記の表に纏めた要素を眺めながら、実はSTP分析が出来ていなかった事に気付き、次節2-1以降はセグメント分析・ターゲティング・ポジショニングの順で、統計情報をまとめて行きました。

申請書では、予め自社が提供するサービスの「分類(セグメント化)」「狙いを決める(ターゲティング)」「立ち位置(ポジショニング)」を統計データを引用しながら明確にしました。その結果、数多くあるコンサル業務を分類し、切り捨てるジャンルを決め、どの様に価値提供して行くかを記述しました。

STP分析

客観性の担保に使ったデータとその入手先

更に、拡販を選択した市場の「市場動向」とターゲットと定めた顧客層の「顧客ニーズ」の妥当性をを証明するために下記の表に示したデータ統計を引用しました。これらの、市場分析から狙いを定めるまでのプロセスで、申請書のストーリーにマッチした統計値やグラフを探すのに思いのほか多くの時間を費やしました。しかしこれらのデータを多く使う程、審査員に「やってみなければわからない不確実性」の印象を和らげる効果があります。

提示した申請書のセクション引用した統計データ
2-1.市場の動向建設業許可業者数調査の結果について -建設業許可業者の現況(令和7年3月末現在)-
2-1.市場の動向建設工事受注動態統計調査報告令和7年3月分23-24頁(国土交通省総合政策局)
2-1.市場の動向建設業許可業者数調査の結果について -建設業許可業者の現況(令和5年3月末現在)
2-2.顧客ニーズ2025年版中小企業白書・小規模企業白書の概要(中小企業庁)
2-2.顧客ニーズ【帝国データバンク】全国「社長年齢」分析調査(2024年)

申請書に引用し、グラフを表示した統計データ

持続化補助金申請の「収益納付」制度の落とし穴と注意点

補助金で利益が出たら返金?収益納付の概要

補助金を使った事業で利益が出ると、その一部を返金(国庫納付)しなければならない場合があります。これを「収益納付」といいます。日本商工会議所のりーふれっとに拠れば「「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」等の規定により、補助事業(補助 金の交付を受けて行う事業)の結果により収益(収入から経費を引いた額)が生じた場 合には、補助金交付額を限度として収益金の一部または全部に相当する額を国庫へ返納 していただく場合があります(これを「収益納付」と言います)。 」となって居ます。

この補助金の目的は拡販です。広報費で、チラシやDMを送付して選定した事業の売上を伸ばす事です。ところが、下記の②の様にECサイトを製作したり、ショッピングモールをレンタルするなどして「物品販売」をして利益が生じた時は、その金額を補助金採択額から控除する事になっています。留意が必要です。

出典:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金

コンサル業でも収益納付の対象になる?

筆者のようなコンサルティング業の場合、広告やサイト制作の効果が数字に現れたとしても、それが補助金の直接的効果であるかを特定するのは困難です。したがって、収益納付の対象となる可能性は極めて低いと判断されますが、説明責任を果たすために、反応率や成約率の変化を資料として残す準備はしておくべきです。

申請書内での説明の工夫

補助事業計画書の記述では、「本事業により直接的な利益発生は想定していない」と明記したうえで、収益性がある場合の説明責任にも言及しました。これにより審査員に誠実な姿勢を伝えることができます。

まとめ:持続化補助金申請の体験から見えた5つの注意点

如何だったでしょうか。実際に申請システムに入力する段階で、初めて気づく事や悩む事をご紹介しました。改めてリストアップすると以下の通りです。

  1. 補助対象経費の配分制限を早期に把握すること:特にウェブ関連費は1/4ルールに要注意。
  2. STP・SWOT分析は簡潔に。データの裏付けが鍵:白書や公的統計の活用で客観性を担保。
  3. 収益納付は低リスクでも想定しておく:書類での誠実な記述が安心材料に。
  4. QRコードやLPの活用で広告効果を可視化:反応率の計測が重要な評価指標に。
  5. 商工会の面談予約はシステム障害を見越して早めの行動を:バグへの対処法を事前に準備。

これから申請を行う皆さんにとって、上記のような実体験に基づく情報が少しでもお役に立てば幸いです。補助金申請は「書類作成」だけでなく、「実行可能な計画」と「申請環境の理解」が求められます。慎重かつ柔軟な準備で、補助金活用を成功させましょう。

この記事の内容について、疑問質問のある方は気軽にお問合せ下さい。

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