あなたは、ドローンを趣味で操縦してますか?あるいは、見たり触ったりした事がありますか?経済産業省発表の統計によれば、日本のドローンビジネス市場は現在5,000億円規模で3年後には65%程度の成長が見込まれます。中でも物流分野や点検サービスでのドローン活用が急増する見通しです。これは、商業用ドローン市場の成長率が年平均3%である世界市場に比べれば日本市場としては著しい伸び率です。この言わば「遅れてやって来たブーム」の理由は、国土が狭く人口密集地が多い日本では、各種規制との整合や私たちの頭上の安全基盤の調整に時間を要したからです。しかし、これからは急激なドローンの活躍範囲の拡大が期待されます。貴方も、補助金を活用してドローンビジネスを始めては如何でしょう?この記事では、専業ドローンビジネスの始め方やドローン・パイロットの副業を始める為の、航空法の話題や国家資格取得の方法と、その資金調達のための補助金申請書の書き方を初心者向けに易しく解説します。

出典:経済産業省無人航空機(UAS)の社会実装に向けた 経産省のこれまでの取組について
申請対象事業分野の基礎情報の整理
まず、これから申請書を書こうとする業務分野の基本的な情報を整理します。それは、参入障壁となる法律や行政上の規制(政治的要因)、市場の伸び率などの動向や参入する際の最低事業規模の制約の有無(経済的要因)、事業の背景にある社会的ニーズ(社会的要因)、その事業で扱う技術やインフラなどの最新動向(技術的要因)などです。これは、一般にPEST分析と呼ばれています。そして、事業計画書の中では特に「経済的要因」と「技術的要因」をアピールする記述が求められます。しかし、その前提としていくつか知識として理解して置くべき事があるので紹介して置きます。

ドローンビジネスの種類とニーズ動向の概要
ドローンと一口に言っても、様々なデザインやサイズや用途の機種が出回って来ています。空撮や点検用の小型機、農薬散布や測量用の中型機、重量物を離島まで空輸し帰ってくる大型機などです。
デザインも、マルチロータ(回転翼)の他にグライダータイプや、サイクロローターと呼ばれる円筒形の羽を持つタイプ、等もあります。

また、ドローンが実用化された初期の頃は、空撮や農薬・肥料散布や測量などが一般的でしたが、現在では屋根や外壁の点検、ビル・橋梁・構造物・道路トンネル・鉄道トンネルの点検や診断、更にはその他過酷エリア施設点検や水中ドローンの活用が増えてきました。

出典:経済産業省無人航空機(UAS)の社会実装に向けた 経産省のこれまでの取組について
その様なビジネス環境の中で、特に注目すべき点は機体メーカーの売上よりも、むしろそれを使用して「サービス」を提供するビジネスの急成長ぶりです。この、ドローンを使ったサービス提供の中でも、下記の政府発表資料の中で見かけの伸び率が特に大きいのはの53倍の「物流」分野です。しかし、元々ドローン物流は市場規模が小さく2025年時点でも797億円の予想でした。その反面、伸び率第2位の「点検」分野は6.1倍の伸び率ですが市場規模が大きく2025年度で1,715億円なのです。
そこで本稿では、ドローンによる「点検サービス」事業にフォーカスし、貴方が補助金を使って事業を立ち上げる為のプロセスを解説します。

ドローンビジネスの(政治的・経済的・社会的要因)
この事業の参入障壁は「法律の順守」で、航空法の規制に依って管理されている事が最大の特色です。また、経済的要因としては、建設業や運輸業及びそれに関連する各種点検サービス業で「人手不足」を解消し「効率化・省力化」を実現する事にドローンが貢献しつつあります。最後に、社会的要因としては、多くの方が軍事目的でドローンが使用されている報道を目にしていて、領空の安全にたいする一不の漠然とした不安を感じる事があったと思います。これらを踏まえ、この新規ビジネスの内容を明確化して行きます。
まずは、経済的要因の法規制の概要を先に見て行きます。
ドローン飛行の法規制
まず、全てのドローン飛行を屋外で行う事業者が知って置かなければならない規則は以下の通りです。
航空法のルール①2つの前提条件
まず、ドローンは誰でも飛ばせるのでしょうか?その答えは、自動車免許の場合と異なり、航空法とその他のルールさえ順守すれば操縦に資格や免許は必須ではありません。但し、この「航空法やその他のルール」というものが沢山あります。航空法については、大まかに言うと飛行禁止区域と飛行方法の規則が重要です。
下図の、X印の行為は「禁止」されています。一方(2)の上段で示された、日中の目視飛行で人や他人の物などから30m以上の距離が確保できる(私有地内)飛行は問題有りません。

又、飛行させる機体については、100g以上の重量の無人航空機(ドローンやラジコン機)を屋外で飛行させるには、航空局に「機体認証」と呼ばれる登録を行い、その認証記号を機体に表示する必要があります。

出典:機体認証|無人航空機レベル4飛行ポータルサイト – 国土交通省
そして、パイロットは屋外で飛ばす前に、10 時間以上指導者の下での飛行訓練を実施しその証明書を確保しておく必要があります。前者は、適切な機体を購入して登録先の航空局のウェブサイトに行きその指示に従えば30分程度で完了します。
しかし、問題は後者です。広大な私有地や屋内などで、一人で練習する事が出来たとしても、「指導者の下で飛行訓練」した事が証明出来なければいけません。その意味で、身の回りに所定の資格者が居て10時間の間あなたの練習に付き合って貰えない限りは、ドローンスクールで実技指導受ける方が効率的です。
航空法のルール②飛ばせる場所と飛ばし方の詳細
二つの前提条件は、それぞれどの様なものか少し詳しく見て行きます。
飛行禁止区域に関するルール
①飛行できるエリアは、空港や発電所或いは首相官邸付近などの平面的な制限と、軽飛行機の空域を侵害しない為の垂直方向の制限がありあます。
②150m以上の高度で飛行させる事はできません。
例えば、高度制限150mである為、それより高いフロアーの高層ビル外壁等の点検をする際は別途事前の許可手続きや物理的な対策が必要です。

出典:無人航空機の飛行の許可が必要となる空域:無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 – 国土交通省
③そして、人家の密集地で飛行させることも禁止されています。
これは、点検業務と最も関係が深い規制の一つで、オフィス街や住宅街での飛行の際問題となります。
この点については、「地理院地図」というものが公開されています。下図に示された地理院地図では①東京や神奈川の人口密集地域では赤色で「原則飛行禁止」されている事や、成田空港や羽田空港の周囲が緑の円で禁止区域である事を示しています。

出典:国土地理院ドローン飛行禁止区域図:地理院地図 / GSI Maps | 国土地理院
④また、山火事の消火活動やドクターヘリ等優先順位の高い航空機が「緊急用務」で接近するときは直ちに着陸して空路を譲る義務があります。
飛行の方法に関するルール
次に、「飛ばし方」に関するルールには、①催し場所での飛行禁止、②危険物輸送の禁止、③物件投下の禁止などがあります。
そして、点検業務と最も関係するのは、近隣の「人や建物、自動車などと30メートル以上の距離」を保つことという規制があるです。と云うのは、実務上住宅街やオフィス街では、離着陸地点から対象建物上空や周辺に接近するまでに、どうしてもその他人の土地や駐車車両や公道など禁止エリア上空を通過する事が必要になる場合があるからです。
そこで、航空局のDIPSというシステムから、上記の各禁止項目に対し「飛行許可申請申請」を提出し審査を受けた後に「許可」を貰います。これが、無人航空機の飛行許可申請と云われるものです。これには、イベント毎に許可を得る方法と年間を通じて共通要件のみ許可を得て置く方法があります。

出典:航空局DIPS申請ポータル共通業務/メニュー
航空法のルール③飛行カテゴリーと飛行レベル
因みに、ドローン飛行ルールでは「カテゴリー」と「レベル」という2つのリスク区分が設定されています。
「カテゴリー」とは、飛行形態に応じた人身被害とその会費対策を組み合わせたリスク分類の事で、大まかに3つに分類されており下図の通り定義されています。この中で、最もリスクの大きいカテゴリーⅢは「国家資格」が無いと飛行できない区分です。

「一方、「レベル」とは、ドローンの自動操縦機能と飛行エリアの組み合わせに投じた飛行の危険度「レベル」の事です。
飛行地域、無人/有人の違いと、目視飛行/目視外飛行、の組み合わせにより4つに分類した定義されています。そして、最もリスクの高いレベル4は当初は飛行禁止になっていました。しかし、2022年12月5日より、機体認証と、技能証明を得て、国土交通大臣の許可・承認を得れば飛行可能になりました。以上の経緯で、ドローン操縦の国家資格がスタートしました。

出典:国土交通省航空局微塵航空機に係る制度検討の経緯についてPowerPoint プレゼンテーション
ドローンビジネスに要求される:操縦スキルの獲得(技術的要因)
ドローンスクールは必須か?二等国家資格のメリット
この様な背景のもとに、レベル4飛行を認めて貰う為の複数ある条件の一つに技能証明が定義されて以降、国土交通省認定ドローンスクール(登録講習機関)の存在が意義を持つようになりました。
また、ドローン操縦の国家資格にも一等と二等という区分が設置されました。一等無人航空機操縦士資格者には、「レベル4の飛行」や「補助(安全の為の通行制限とうの管理者)なしでの高度な飛行」が認められます。一方、二等無人航空機操縦士資格では、レベル4の飛行は出来ません。そして、日中に目視飛行を行う点検業務に国家資格は必要ありません。
では、なぜ二等無人航空機操縦士資格を持つパイロットが居るのでしょうか?それは、間接的に以下の様な効果があるからです。そもそも国家資格統一前までは、民間スクールが全国に多数度乱立し独自の資格を認定したのでレベルもまちまちでした。その為、卒業しても実際の業務にマッチした操縦技術が身について居ない場合もありました。その反面、統一国家資格では学科試験の他、実地試験の中で机上試験や口述試験及び飛行試験の統一された規格があります。その為、それをパスした無人航空機操縦士国家資格保有者は、飛行時の近隣住民や点検業務の依頼者に一定の信頼感を与えてくれるほか、警察や役所の窓口等での届け出や事前通報の際も手続きがよりスムーズになります。
✅ 二等無人航空機操縦士資格取得に必要な費用と時間の目安
では貴方は、二等無人航空機操縦士資格を取りたいですか?それとも、無くても良いと思いますか?
これ迄、紙面を割いて小型無人航空機に関する航空法の概要をお伝えしてきた理由は、万一「業としてドローン飛行を行い」それが原因で何らかの「物損事故や人身障害事故」が生じてしまった場合、ご自身を防衛する必要があるからです。金銭賠償で解決できる場合は、ドローン保険でカバーされて居さえすれば問題ありません。しかし、航空法違反の罰則は、2年以下の懲役刑と罰金です(航空法第百五十七条の六第四号)。さらに、第三者のクレームや風評損害を事前に予防するには二等程度の無人航空機操縦士資格は無駄ではないと判断できるからです。
そこで、二等無人航空機操縦士資格をとる方法と補助金申請時の参考価格を下記の表に簡単にまとめて置きました。特に、経験者であっても指導者の監督の下で「10時間飛行した」エビデンスをお持ちでない方は、スクール等の施設で練習して指導教官からその証明を入手して置く事は今後のDIPS登録ルール変更の観点からも意義があります。(実技訓練だけのコースがあればそれでも十分です。)
ドローン国家資格(無人航空機操縦士・二等)を取得するために必要な費用と時間について、以下に一般的な目安をまとめます(※2025年時点での民間スクール相場を基にしています)。国家資格を取るかどうかという点と、どの専門業種のドローンスクールを利用されるかについてはご自身で検討してください。
項目 | 経験者向け(実地経験10時間以上) | 初心者向け(無経験~10時間未満) |
学科講習 | 6~8時間程度 | 10~12時間程度 |
実地講習(実技) | 6~10時間程度 | 12~16時間程度 |
受講期間の目安 | 1~2日間集中または2~3日分割 | 3~5日間(1週間程度) |
スクール講習費用の目安 | 約18~25万円(税込) | 約25~35万円(税込) |
国家試験受験料(別途) | 約30,000円前後 | 同左 |
登録講習機関への修了審査料(含まれている場合も) | 約10,000~20,000円 | 同左 |
合計費用目安 | 約25~30万円前後 | 約30~40万円前後 |
以上、ドローンビジネス開始に必要な「スキル」とりわけ法規の知識と操縦スキルの習得にについて解説しました。つぎは、「設備」つまり購入すべき機体や付属品とそのコストを見て行きます。
ドローンビジネスに要求される「設備」:適用機種選定とコスト(経済的要因)
機体を選定するにあたり、業務毎の向き不向きや仕様や機能のグレードが異なります。ここでは、その概要を確認して行きます。
- 機体ごとの機能の特色
ドローンは多くの機種が出回っていますが、機能に着目すると以下のように分類できます。
- 屋外中心&コスト重視 → Autel EVO II Pro
- 公共施設や通信インフラ点検 → Parrot Anafi Ai(5G映像伝送対応)
- 人通りや狭所が多い現場 → Skydio 2+(自律回避機能が強力)
- 海沿いや山間部など過酷環境 → Acecore Zoe(高耐久・高剛性)
この他に、プラントや複雑な空間で撮影診断する特殊用途のドローンもあります。

以下、代表的な機種とその機能を例示します。
① Autel Robotics EVO II Pro V3(Enterprise)
- カメラ:1インチCMOS、6K動画対応、ズーム機能あり
- 特徴:高画質・高耐風性能、飛行時間最大40分、現場向きの安定性
- 用途:建物屋根・外壁・設備点検、動画撮影、災害現場記録など
- 価格:35万~60万円前後(エンタープライズキットで約80万円)
- URL:https://auteldrones.jp/collections/evo-ii-series

②Parrot Anafi Ai(4G対応)
- カメラ:48MP、4K HDR、32倍ズーム(デジタル)
- 特徴:4G接続でリアルタイム映像共有可能、軽量で狭所対応しやすい
- 用途:ビル外壁、看板・設備点検、教育・行政業務など
- 価格:約60万円前後(アクセサリ含む)
- URL:https://www.parrot.com/jp/drones/anafi-ai

③ Skydio 2+(Enterprise Kit)
- カメラ:4K60fps、HDR動画対応、1/2.3インチセンサー
- 特徴:AI障害物回避に特化(業界トップレベル)、自律飛行で狭所も安全
- 用途:橋梁・屋根・倉庫・工場など複雑な環境での点検撮影
- 価格:50万〜100万円(用途により拡張可)
- URL:https://www.skydio.com/skydio-2-plus-enterprise

撮影した画像が3D処理され回転させることが出来る
④ Acecore Zoe (オランダ製)
- カメラ:カスタム対応(Sony αシリーズなど搭載可能)
- 特徴:全天候型、防塵防滴仕様、高耐風性(海上や山間部対応)
- 用途:港湾・ダム・風力発電施設など過酷環境の点検撮影
- 価格:数百万円規模(高価格帯)
- URL:https://www.acecoretechnologies.com/zoe

機能の比較早見表(抜粋)
機種 | センサー | 飛行時間 | 特徴 | おすすめ対象 |
Autel EVO II Pro | 可視光・1インチ | 約40分 | 高画質・ズーム | 汎用施設点検 |
Parrot Anafi Ai | 可視光・48MP | 約30分 | 4G接続可能 | 行政・屋根 |
Skydio 2+ | 可視光・4K HDR | 約27分 | 自律飛行・障害物回避◎ | 橋梁・構造物 |
Acecore Zoe | カスタム可 | 約40分 | 高耐環境性 | 過酷エリア施設 |
- 付属品価格とその他
本体の他に、下記の様な装備も選定し準備する必要があります。
備品等:急速充電機などー現場を掛け持ちする場合(補助金申請可)
その他、補助金申請は困難ですが出費を伴う可能性がある項目は以下の通りです。
移動手段:バイク、軽トラック、ワンボックス型自動車の購入
その他の備品候補:
ヘルメット・グローブ・作業服・ビブス・コーン・パイロン・立て看板・靴・サングラス・無線機
ドローンビジネスに必要な「資金」:所要運資金の試算(経済的要因)
ドローンを使った、点検サービス事業に必要な経費は機体の購入と外部講習から2等国家資格取得までで最低150万円程度です。これは、ものづくり補助金や省力化補助金ならば賄える金額です。また、小規模事業者持続化補助金の場合、通常枠の50万円では厳しいですが、創業枠補助額200万円補助率2/3を活用すれば活用可能です(開業後3年以内)。
- 補助金対象経費】
そして、各補助金に共通して使える経費は、ドローン本体の購入費と予備電源や充電器等の備品及び補ですが、助金によってはドローンスクールの費用が補助される場合があります。
- 飛行に必要な人件費
一方で、補助金採択後開始後の事業期間のなかで、点検業務で雇用する補助者(安全誘導係)のアルバイト料は補助金審査の際は却下される可能性が強いと考えられます。
- その他
その他の経費としては、金額に制限が付きますが、Webサイト制作関連費、動画制作費、広告宣伝費などの計上が可能となります。
■ 経費内訳(モデル)
Webサイト開発費と広告宣伝費を除く、ドローンビジネス開始の為の最低限の資金は概ね以下の通りです。
項目 | 内容 | 経費区分 | 金額(税込) |
ドローン本体 | 国産業務用機(例:ACSL Mini) | 補助対象設備 | ¥880,000 |
ソフトウェア | 点検報告生成システム | 補助対象設備 | ¥198,000 |
操縦講習費 | 国家資格2等講習(1名分) | 訓練費(補助対象) | ¥297,000 |
導入指導 | 操縦マニュアル作成支援 | 外注費 | ¥110,000 |
合計 | ¥1,485,000 |
→ 補助率:小規模事業者で最大2/3 → 補助額:約990,000円
✅ ドローンビジネスの補助対象になる可能性がある補助金
以上で、これから申請しようとする事業分野のPEST分析による予備調査が終わりました。これから、は補助金の選定と申請書の草案作成に移ります。
🔍 活用シーン別おすすめ補助金
次は、活用すべき補助金の選択ですが、貴方の置かれた状況や事業構想に応じて下記の表の様に5つのパタンに分かれます。
貴方が、製造業や建設業或いは点検サービス業等に従事して居て、そのご本業の差別化を図る為にこのサービスを事業に追加したいのであれば、①か②の補助金で予算は潤沢です。一方、初めて事業を興すので先ずはコンパクトにやってみたい場合は③がお薦めです。最後に、登録講習機関(ドローンスクール)に通い3等国家資格取得までで良い方は④の助成金が良いでしょう。
シーン | おすすめ補助金 | |
① | 高額機体+AIソフトを導入してDX化したい | ものづくり補助金(成長分野枠) |
② | 人手不足をドローンで解消したい(定型作業の省人化) | 省力化投資補助金 |
③ | ドローンを使って新規創業したい | 持続化補助金(創業枠) |
④ | ローカル助成金 | 登録講習機関(ドローンスクール)に行き2等国家資格を取得 |
更に絞り込むには
大まかな振り分けが解った所で、ケーススタディをしてみます。
【申請者のペルソナ設定】
これから、ドローンを使った「点検サービス」の事業計画書を作ります。そこで、この事例の申請者像を以下の様に設定します。
私は、コンサルタント業の個人事業主です。これから、ドローンを使った公共入札案件に応募する事業を始めたいと思います。ドローンは保有していますが、レンズのズーム機能が有りません。また、小型無人航空機操縦資格は持って居ません。そこで、二等操縦士資格の学科は独学で学び、実技は本試験の機種と同じドローンを使用する登録講習機関(ドローンスクール)のトレーニングを受講します。
【どの補助金を選択すべきか】
上記の設定ですと、③で賄えそうですが、私は創業後3年以上を経過しているので資格がありません。そこで、①か②になります。しかし、補助率を見ると①は2/3です。今回は、登録講習機関(ドローンスクール)の講習会費用も申請に含めたいので①のものづくり補助金を申請する事にします。
補助金名 | 活用対象 | 補助上限 | 補助率 | 特徴・活用例 | |
① | ものづくり補助金 | 中小企業 | 最大1,250万円(類型による) | 原則1/2(小規模2/3) | 高額機体・点検ソフト導入・業務革新に◎ |
② | 省力化投資補助金 | 中小企業(賃上げ前提あり) | 最大750円 | 原則1/2(小規模2/3) | ドローン導入による省人化・作業効率化に適用 |
③ | 小規模事業者持続化補助金(創業枠) | 創業3年以内の小規模事業者 | 最大200万円 | 2/3 | 機体・販促・HP制作など幅広く対応可能 |
④ | ローカル補助金/ ドローン操縦者技能証明取得支援補助金 | 無人航空機操縦士国家資格者養成 | 最大10万円 | 定額 | ドローン操縦者技能証明取得支援補助金/秩父市 など |
活用可能な補助金まとめ
因みに、ドローンスクールの経費が採択され易いかどうかについては下記の集計表の通りです。
補助金名 | 講習費が補助対象になるか | 備考 |
ものづくり補助金 | ◎ 高い可能性あり | 外注費・専門家経費として明記可 |
省力化投資補助金 | ◯ 条件次第 | 設備導入に付随する訓練が前提 |
持続化補助金(創業枠) | ✕ 原則対象外 | 講習費は対象経費に含まれない |
①ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金の申請資格があるか点検します。応募資格は、会社又は個人なので問題有りません。基本要件の①②③も満たせる事とします。
補助対象経費は「単価50万円以上の機械装置等」なので新規にドローンを1台購入します。
【国家資格取得補助】
ドローンスクール経費も申請に含めます。
対象経費カテゴリ:
スクールの費用を「外注費」や専門家経費・技術導入費(講習・研修含む)として計上します。
- 対象条件:
・講習が補助事業の遂行に直接必要であること(例:業務に必要な資格取得)
・外注先が正式なスクールで、見積書・請求書が出ること - 留意点:申請書に上記2点をアピールします。
【点検事業のセグメンテーション】
ここで、更に「点検サービス」の中でも対象分野が分かれますので絞り込みたいと思います。

対象物の、面積、距離、一回あたりのフライト時間の長さに着目して順に並べると以下の順になります。
A ソーラー発電所のパネル劣化定期点検(赤外線診断を含む)
B 鉄道トンネルや橋梁の劣化点検(赤外線診断を含む)
C 高速道路・一般道のトンネル内壁の劣化や法面の点検(赤外線診断を含む)
D オフィスビルや、煙突やガスタンクなどの構造物の点検(赤外線診断を含む)
E 下水道暗渠ないの劣化点検(赤外線診断を含む)
F 民家の外壁・屋根の劣化点検(目視画像)
新規事業の場合、分野を絞るにはあなたのこれまでの業務経歴や実績に応じ一番造詣の深いものを選びます。例えば、当事務所では、建設業のうち外壁塗装と屋根工事及び解体工事の顧客が多い為、「F.民家の外壁・屋根の劣化点検(但し、ソーラーパネルを載せた屋根もある為(赤外線診断を含む)に修正)」に限定します。その逆に、道路公団・鉄道公団・下水道局などの公共入札案件の仕事には未だ縁がないので手を広げるのを控えます。Fが軌道に乗った後Aの分野に拡大します。対応地域も限定します。
採択されやすい申請書の書き方ケーススタディー解説
ではここから、ものづくり補助金の様式に沿って採択されやすい申請書の書き方を解説して行きます。
✅【ものづくり補助金】申請構成案(講習費含む)
この条件で、申請書の要点を纏めて行きます。
(1)事業枠
☒製品・サービス高付加価値化枠
(2)事業計画名(30字以内)
「AI対応ドローンを活用した屋根・外壁点検サービスの構築」
(3)事業計画の概要(100字以内)
中小建設業事業者の顧客の間では、現場のドローン点検画像のにーズが増えつつある。しかし、業者が単独で撮影を進めると、事前調査や工事スケジュール調整の点でロスが多い。そこで、当事務所が同サービス提供する。(100字)
(4)事業分野
☒新役務(サービス)の開発
(5)具体的内容 (申請の論理的整合性の構築)
ここからが、採択の可否を分ける重要な事業計画事項です。参考様式の①から⑧の内、今回は最も重要な④までをて検討して行きます。記述は、要点を箇条書きにして論理の流れを構成して行きます。
①今回の事業実施の背景(1000字以内)
- ドローン点検市場の拡大、建物診断の省力化ニーズの高まり
ドローン点検市場は、ここ5年で6.1倍に拡大し2025年予想では1,715億円の市場に成長する見込み。 - その流れを反映し、建設業の各現場でも「ドローン活用」を要望する声が増加

- しかし、ドローン点検を外部に依頼する場合、TV番組の空撮と異なり一定の土木や建築業の現場の動きとの調和が要求される為割高。
- また、ドローン飛行の規制を行う航空法は複雑化しており一種の参入障壁を形成している。
- 従って、この分野の点検業務遂行には、Politikal要因としては「航空法関連規制」を完全にマスターする事が必要。
- また、それと並行してドローンを操縦士使いこなすTechnology要因の克服も必要となる

- 一方、顧客の工事現場は様々な地域に分散し撮影業者は当日初めて施主と会う事も多い
- 現場の周囲環境や許可申請に精通していない為、人員配置や事前挨拶や届け出に齟齬が生じやすい
- また、道路の通行制限や立ち入り管理の誘導補助者の人件費(ガードマン費)が大きなインパクトに
- そこで、長年建設業企業のコンサルタントを務めた当事務所がドローンを持ち込み社員の協力を得て空撮と点検を実施すれば、ガードマン費用問題は解消する
- 元来、建設業が本業である会社は、顧客やゼネコンや元請け会社かにドローン診断費用請求できない
- 自社のコスト負担で、画像エビデンスを提供する事は長期的な工事付加価値を上げる営業活動の一環
- いずれは社員の手で業務の合間に空撮や点検が手軽に実施できる様にするとこが顧客のゴール
- 以上の背景から、先ずは現場でドローンを飛行させてその前後の段取りを効率的に手分けするノウハウを蓄積する
② 会社全体の事業計画(1000字以内)
- 現状、空撮・点検事業を内部で実施するには、ドローンの飛行と撮影スキルはあるが二等無人航空機操縦士資格がない
- この資格は、施主や元請け企業及び飛行区域の近隣住民の不安を逓減させる効果がある
- 依って、二等無人航空機操縦士資格の取得の講習参加が補助事業の遂行に必要不可欠
- 操縦者は航空局の認定スクールでこの業務に必要な資格を取得する
- 今回有二等無人航空機操縦士資格を取得する事で同レベルのスキルを顧客社員に伝達可能
- 以後、顧客社内の人材のドローン操縦訓練と国家資格取得をに向けての指導を担当する
- この様にして、顧客が現場の信頼性と安心を積み重ねる事を習慣化すると施主や元請けの評価が上がる
- そして、自然に社内でドローン点検が出来るスタッフが育てば競合他社に対して優位に立てる
- それは、現在好景気で人手不足の最中にある顧客が採算性を改善するトリガーとなる
- そして、顧客の採算性が改善され当事務所の貢献が形になればWinWinになる

③ 今回の事業/事業実施期間の具体的アクション(1000字以内)
- 顧客営業部門に、ドローン点検の活用が有効な場面と受注貢献度をヒアリングする
- 貢献度の高い業務や現場に特化したPR資料を作成し配布して貰う
- 営業活動を通じたユーザーの反応に応じ「屋根・外壁点検」以外に周辺ニーズが無いか検討
- 点検用ドローンと専用解析ソフトを購入する
- 航空局に「機体認証」の登録を行い、その認証番号を機体に表示する
- 二等無人航空機操縦士資格の取得の講習参加する
- DIPSの飛行許可の包括申請をする
- 最初の現場点検撮影作業を実施する
- 結果の画像と動画を編集し施主に提供する
- 画像や事前挨拶等全体のサービス満足度についてヒアリングし「お客様の声」を記録する
- 修正すべき点を今後の事業計画詳細マニュアルに反映する
- 「ドローン点検サービスの」Webサイトを製作する
- SNSのリール動画を作成し配信する
- 水平展開の、潜在顧客に対しPR活動を行う
- 二等無人航空機操縦士資格を取得する
- デジタルマーケティングによる広告活動を行う
④ 今回の事業に要する経費(1000字以内)
- 機体導入:高性能な業務用ドローン1台+予備バッテリー等
- 画像分析ソフト導入:飛行管理・点検レポート作成ツール
- 訓練費:国家資格(2等)取得のため、登録講習機関(ドローンスクール)での実技・座学講習
(費用:税込30万円前後/人、見積書あり) - 外注費:点検作業クルー操作マニュアル制作費
■ 経費内訳(例)
項目 | 内容 | 経費区分 | 金額(税込) |
ドローン本体 | 国産業務用機(例:ACSL Mini) | 補助対象設備 | ¥880,000 |
ソフトウェア | 点検報告生成システム | 補助対象設備 | ¥198,000 |
操縦講習費 | 国家資格2等講習(1名分) | 訓練費(補助対象) | ¥297,000 |
導入指導 | 操縦マニュアル作成支援 | 外注費 | ¥110,000 |
合計 | ¥1,485,000 |
これに、加えてWebサイトの構築費や、SNS動画やYouTube動画の制作費、デジタル広告費やチラシDM等の広告宣伝費を必要に応じて計上して行きます。
以上が、新事業を検討し申請書の事業計画書内容の最も難しい部分です。最初にお示しした様に、幾つかのマーケット分析やSWOT分析が充実して居るほど、①の市場ニーズが的確にアピールできます。そうすると、②の自身の新事業の取り組むうえでの立ち位置と成功の確からしさが強調できます。そこまで高まると、③のこれからやるべき準備事項が見えてきます。後は、④でそれらのアクションごとに必要な購入設備や経費をマッピングして行きます。
さてここからは、ご自身の技術的センスをアピールする所です。⑤今回の事業の革新性・差別化(1000字以内)や、⑥今回の事業が事業計画期間に自身に及ぼす効果/賃金引上げ(500字以内)、及び⑦今回の事業が事業計画期間に市場に与える効果/付加価値額の増加(1000字以内)などの事業の効果は、先の①~④を読み返すと見つかります。そこで、ポイントが高くなるキーワードは以下のものです。
- 顧客対応スピードが向上、外注依存からの脱却
- 売上増加と新規サービス収益の見込
- 賃上げ実施予定(例:従業員給与2%UP)
そして最後に、⑧地域の資源や地域経済への貢献(500字以内)を付け加えます。
まとめ
如何だったでしょうか。今回は、ある新事業を取り上げてものづくり補助金を申請する際の、準備調査の手順と事業計画書に落とし込む過程について解説しました。
各事業分野に共通する原則は、①市場ニーズが拡大している事を統計値で証明する、②自身がその分野に造詣が深い事を事業計画の中で示す、③その補助事業が成功する事が伺えるアクションプランを重複や欠け落ちの無いよう記述する、という点です。
この記事で、事業計画書の組み立て手順の流れを参照して頂き、ご自身の新たな事業展開の糸口として補助金申請が出来る事を期待しております。何か、ご質問やお問い合わせがありましたら、お気軽の無料相談をご利用ください。
