2025年、中小企業を取り巻く事業環境は、物価高、人材不足、既存事業の成熟化など、過去にないほど厳しさを増しています。こうした状況下で、多くの企業が「新たな収益源の確立」や「市場転換」を迫られており、その挑戦を後押しする政策として創設されたのが「中小企業新事業進出促進補助金」です。本記事では、2025年度・第2回公募を対象に、制度の目的、対象者、採択要件、対象経費、申請手続き、事業計画書の作成ポイントを“経営者目線”で体系的に整理します。さらに、前回公募の採択結果を踏まえた実務的な攻略ポイントも解説し、申請を検討する企業が最短で必要情報にアクセスできる構成としています。

🟥【この記事でわかること】

まず、この記事で得られる情報を先にお伝えしましょう。

  • 補助金の目的と制度全体像
  • 第2回公募のスケジュール(受付=11月10日〜)
  • どんな企業が対象になるのか
  • どんな事業が採択されるのか
  • 審査で重視されるポイント
  • 申請準備で絶対にやるべき事
  • 前回不採択の典型パターン
  • 8,000字で深く理解できる補助金攻略ガイド

なぜ今「新事業進出」が必要なのか

さて、日本の中小企業を取り巻く事業環境は、2025年にかけて急激に変化しています。資材高騰による原価率の悪化、人手不足に伴う労働生産性の低下、人口減少による既存マーケットの縮小、デジタル需要の急拡大と対応遅れなど、経営者が同時に複数の課題へ対処しなければならない状況です。加えて、若年層の減少や地域経済の空洞化によって、従来のビジネスモデルでは成長が見込みにくくなっています。そのため「既存事業依存」から脱却し、新たな売上構造をつくる戦略が求められています。この新たな挑戦を後押しする施策として登場したのが本補助金です。

【背景】中小企業を取り巻く経営環境の変化

そして、環境変化のポイントを簡単にまとめると以下の事に代表されます。

  • 資材価格の高騰による原価圧迫
  • 人手不足による生産性の低下
  • 市場縮小による既存事業の成長限界
  • デジタル需要の拡大と対応遅れ
  • 後継者不足による事業変革の必要性

結果として、中小企業は「既存事業の延長では成長しにくい」状況に直面しています。

第1回の採択状況

この補助金の第1回公募では、3,006件の応募があり、そのうち1,118件(37%)が採択されています。

出典:第1回公募の採択結果について

また、業種別では製造業が全体の20%を占めます。

補助金の全体像(2025年第2回公募)

ここでは、最初に制度全体を俯瞰します。補助金申請で最も重要なのは「制度の全体像」を正しく把握することです。本補助金は、高額投資を伴う“新事業進出”を支援する制度であり、要件が多く、準備にも時間がかかるため、まず内容を正しく理解する必要があります。

■ 第2回公募スケジュール(最新日付)

 第2回公募は、11月10日申請受付開始、12月19日締切となっています。

📌 最重要ポイント:申請できるのは11月10日から。

  • 申請受付開始日:2025年11月10日(月)
  • 申請締切:2025年12月19日(金)18:00 必着
    (出典:公募要領30ページ)

※締切直前は電子申請システムが混雑するため、12月前半の申請完了が推奨

特に重要なのは「申請受付は11月10日から」という点で、事業計画書や行動計画の準備、GビズID取得などはそれ以前に完了しておく必要があります。

■ 補助額・補助率

補助額の上限は従業員規模により変わり、最大7,000万円、賃上げ特例で9,000万円。補助率は1/2で高額投資が可能となりますが、自己資金計画の整理が必須です。

本補助金では企業規模に応じて上限額が設定されており、従業員数が多いほど上限額が高く設定されています。

💡 高額な設備投資や施設改装なども対象となるため、本補助金は大規模な成長戦略を実行する企業に特に向いています。

誰が対象になるのか

対象となるのは中小企業基本法に基づく「中小企業者」です。しかし、親会社の影響が強い企業(みなし大企業)や従業員ゼロの企業などは対象外となるため、自社の区分を確認することが重要です。

  • 中小企業基本法に基づく中小企業者
  • 法人・個人事業主どちらも可
  • ただし みなし大企業は対象外
  • 従業員ゼロ企業は不可
  • 創業1年未満は不利(財務書類が弱い)

どんな取り組みが対象になるのか

この補助金の核心は「新規性」です。新市場向けの新製品・サービス開発や新ビジネスモデル構築が対象。「新規性」を定量的に説明できない計画は不採択となりやすいため、事業内容の根拠づけが重要です。

補助金の審査で最も重視されるのが「新規性」です。単なる設備更新や増産ではなく、新たな市場、製品、サービスを創出する取り組みであることが求められます。

■ 新規性の3要素

新事業進出 針に す「新事業進出」の定義に するよう、以下の要件① ③をす て満たす必要があります。

① 製品・サービスの新規性

既存の延長ではなく、新たな顧客価値を生むことが必須です。競合との差別化要素を性能・価格・提供方式などデータで説明する必要があります。特に審査では「何が新しいのか」を定量的に説明することが重要です。単なる改良ではなく、市場にとって明確な価値があることを示す根拠が求められます。

  • 単なる改良・仕様変更は不可
  • 顧客価値が新しいことが必須

② 市場の新規性

 類似市場への横展開では新規性として評価されにくいものです。ターゲット顧客・商流・用途の違いを明確に説明する必要がある。顧客層が変わるのか、販路が変わるのか、あるいは顧客が抱える課題が異なるのか。市場構造の変化を根拠をもって提示する必要があります。

  • 既存顧客への横展開はNG
  • 新たなターゲットへ提供する必要がある

③ 新事業売上要件_最終年度に売上10%以上

 新事業で一定の売上を見込む計画が必須です。最終年度に「全社売上の10%以上」を新事業が占める必要があります。机上の空論ではなく、客観的な数値根拠が必要です。

  • 新事業が会社全体の10%以上の売上を占めること

🔍【NG事例】

  • 既存製品の更新
  • 老朽設備の入れ替え
  • 既存販路向けの広告
  • 生産能力を上げるだけの設備投資

🔍【OK事例】

  • 新たな用途の製品開発
  • 全く異なる市場への参入
  • DX化により新サービス提供
  • 新たなビジネスモデル構築

賃上げ・付加価値の達成が最大の難所

■ 付加価値額(=生産性)の理解

本補助金で最も難易度が高いのが、付加価値額の向上賃上げ要件です。年平均付加価値4%成長と賃上げのどちらかの達成が必須となります。未達の場合は返還リスクもあるため慎重に設定する必要があります。

付加価値額は“企業の生産性”を表す指標であり、国が最も重視する指標の一つです。 売上ではなく、営業利益+人件費+減価償却費。投資の効果を示す指標として審査で重視される。

付加価値 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

この数値を年平均4%以上で成長させる計画が求められます。

■ 賃上げ要件_賃上げ2.5% または 最低賃金+30円の達成

賃上げ要件については、下記のどちらかを選択し達成する必要があります。計画が現実的であるかどうかが審査で問われます。実現可能な賃上げを見極めながら計画を作成することが求められます

  • 年2.5%以上の賃上げ
  • 最低賃金+30円を達成

■ 賃上げ特例(最大9,000万円)

 高い賃上げを設定すれば9,000万円まで拡大されます。ただし未達時は返還リスクも高くなります。

高額投資を目指す企業にとって魅力がありますが、慎重な検討が必要です。

対象経費の解説

経費は幅広いですが、補助事業との直接性が厳しく問われます。汎用的な設備や既存補修は対象外です。

■ 機械装置費・システム構築費

新事業に専ら使用するもののみ対象ですが、兼用設備は対象外になりやすいので留意が必要です。

  • 専ら新事業に使うこと
  • 汎用設備は対象外になりがち

■ 建物費

新事業に必要な部分のみ対象です。老朽化対応は却下となります。

  • 新事業に必要な部分のみ
  • 老朽化修繕は不可

■ 広報費・販促費

新市場向け販促のみが対象です。既存顧客向けは対象外です。

  • 新市場向け施策のみ
  • 既存顧客向けは不可

申請準備ロードマップ

申請応募から、補助金交付までの流れは概ね以下のイメージです。

■ ① GビズIDプライムの取得

 電子申請必須。取得に時間がかかるため早期対応が必要です。

GビズIDの申請には、登記簿謄本等の証明資料を添付した郵送審査のため、最短1週間、長いと2週間以上かかることもあります。

■ ② 一般事業主行動計画の策定・届出・公表

 次世代法の必須要件。策定・届出・公表が必要です。

次世代法の要件で、策定 → 労基署へ提出 → 自社HPで公表まで必要です。

■ ③ 金融機関の確認書(借入を伴う場合)

 融資を予定する場合に必要となります。交渉と書類作成に時間がかかるため、早期相談が必須です。

採択される事業計画書の書き方

新規性・実現可能性・収益性・賃上げ妥当性を立証する構成にする必要があります。

■ 審査項目を逆算して構成する

以下の審査項目を意識して、事業計画を練ります。

  • 新規性
  • 実現可能性
  • 市場性
  • 数値根拠
  • リスク管理
  • 付加価値・賃上げの妥当性

■ 売上計画・付加価値計画の作り方

売り上げや付加価値の増強に関する計画は、最初に統計分析を実施して置くと後から出てくる数値根拠の算定がスムーズになります。

  • 市場規模
  • 商圏分析
  • 競合調査
  • 顧客課題
  • 算定根拠

■ リスク管理の提示

補助事業に対するリスクを、全てリストアップします。そして、それらに対してどう対応するかを述べます。

  • 人材
  • 技術
  • 資金計画
  • 調達リードタイム
  • 外部連携体制

添付書類の完全チェックリスト

 書類不足は即不採択となります。決算書、行動計画、公表画面など提出漏れがないよう下記リストでチェックしましょう。

書類チェックリスト
□ 決算書(2〜3期)
□ 貸借対照表・損益計算書
□ 行動計画の公表画面
□ 従業員関連資料
□ 見積書(相見積もり)
□ 金融機関確認書
□ 誓約書・同意書

前回公募の不採択ポイント

 新規性不足、数値根拠の弱さ、付加価値の未達懸念などが典型的な不採択理由ですご留意ください。

  • 新規性が弱い
  • 市場分析が浅い
  • 数値の根拠がない
  • 設備導入が目的化している
  • 賃上げが現実的でない
  • 計画のストーリーが不自然

まとめ|補助金を事業変革の起点にする

本補助金は要件が多く難易度が高い反面、成功すれば最大7,000万円〜9,000万円の投資を実現できます。

重要なのは、**「早期準備」「新規性の明確化」「数値の根拠」**の3点です。

📩 この記事を読んで申請を検討したい方へ

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