「子供には継ぐ気がないし、親族を見渡しても後継者はいない……」「うちの古い重機、資産価値はどれくらいあるんだろう?」「M&Aで本当に売れるのか?」。 多くの経営者が抱えるこの悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。特に解体業などの現場では、定期的な重機の更新が必要でありながら、将来の展望が見えず、立ち止まっているケースが多く見受けられます。
2026年1月30日に公開された**「事業承継・M&A補助金(第14次公募)」**は、そんな「次代へのバトンタッチ」を検討している皆様の背中を、最大1,000万円という公的資金で強力に後押しする制度です。
しかし、この補助金は「業者に丸投げすればもらえる」という甘いものではありません。この記事では、認定経営革新等支援機関である行政書士の視点から、初めての方でも迷わないよう採択を勝ち取るポイントを絞って解説します。
この補助金募集枠の過去の採択事例を要約
本補助金の「事業承継促進枠」は、単なる代表者の交代を祝うものではなく、引き継いだ後の**「生産性向上」に資する設備投資**を支援するものです。

採択事例
過去には、以下のようなケースが採択の対象となっています。
• 解体業のDXと省力化: 外部から招いた新社長が、旧来のアナログな管理体制を一新。補助金を活用して、最新の低騒音・低振動重機や現場管理システムを導入。都市部での受注力を高め、燃費効率を向上させることで収益性を大幅に改善しました。
• 伝統技術の「第2創業」: 従業員が承継した製造業。 長年培った技術を活かしつつ、補助金でECサイト構築と新たな加工設備を導入。 これまでの下請け脱却を図り、直接販売による高利益率を実現しました。
これらに共通しているのは、**「古い殻を破り、後継者が主役となって新しい価値を生み出そうとする姿勢」**が評価されている点です。
• 製造業のデジタル化: 親族内承継を機に、古い機械を最新のデジタル制御機器に入れ替え、生産効率を大幅に向上させるプロジェクト。
• 店舗の業態転換: 飲食店を継承した若手経営者が、テイクアウト専用スペースを新設し、新たな顧客層を開拓する取り組み。
• 伝統工芸の販路拡大: 従業員承継により、これまで対面販売のみだった工芸品にECサイトを導入し、海外市場へ展開する事業。
全体に共通しているのは、単に「引き継ぐ」だけでなく、**「引き継いだ後の新しい挑戦」**が評価されている点です。

この補助金に向いている業種と事業形態
本補助金は、資本金1,000万〜3,000万円規模であれば、ほとんどの業種が対象となります。 特に以下のケースに最適です。
• 解体業・建設業: 数千万円単位の重機更新が必要な業種です。事業承継のタイミングで、最新の機械装置を導入し、生産性を高める計画に活用できます。
• 第三者承継(社外からの招へい): 「親族内承継は絶望的」という場合でも、取引先や外部から意欲ある後継者を招くケースが対象になります。
• スタートアップによるM&A: 既存の経営資源(顧客、技術、設備)をスタートアップが引き継ぎ、IT技術を掛け合わせて新たな事業を展開する「第2創業」にも向いています。

さらに、
資本金が1,000万〜3,000万円規模であれば、多くの場合、以下の「中小企業者」の定義に当てはまります。
• 製造業・その他: 資本金3億円以下、または従業員300人以下。
• 卸売業: 資本金1億円以下、または従業員100人以下。
• 小売業: 資本金5,000万円以下、または従業員50人以下。
• サービス業: 資本金5,000万円以下、または従業員100人以下。

向いている事業形態:
• 親族内承継: 子どもや親族に代を譲る予定がある場合。
• 従業員承継: 長年支えてくれた役員や従業員に経営を任せる場合。
• スタートアップによる第二創業: 既存の経営資源を引き継ぎ、全く新しい付加価値を生み出そうとする方。
※ただし、農業・林業・漁業などの第一次産業は原則対象外ですが、加工や料理提供などの2次・3次産業分野であれば対象になる可能性があります。
この補助金の活用で成功しやすい企業とマインド
補助金を受けて事業を成功させる経営者には、共通する「マインド」があります。
- 「自分本位な夢」を捨て、現実を直視する
「うちの重機は中古でも価値がある」「長年の実績(のれん)があるから1億円で売れるはずだ」。そんな漠然とした期待が、M&Aの現場では「1千億円の負債リスク」を指摘されて霧散することもあります。 成功する経営者は、「自社の真の資産価値」を客観視し、後継者に負の遺産を残さないよう情報の透明性を高める努力を惜しみません。
- 「承継か、清算か」を冷静に判断する
無理に会社を存続させて後継者を苦しめるくらいなら、会社を綺麗に畳んで、残りの人生を有意義に過ごすという選択も立派な経営判断です。本補助金は「廃業・再チャレンジ枠」との併用も可能で、一部の事業を廃止する際の解体費なども支援の対象となります。

その他に、事業を成功させる企業には共通の「マインド」としては以下のものがあります。
- 「後継者が主役」であること: 申請書類は後継者が主体となって作成し、事業計画も後継者のビジョンが反映されている必要があります。
- 「生産性向上」への執着: 5年間の計画で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率3%以上伸ばすという高い目標を掲げる意欲が求められます。
- 地域経済への貢献意識: 地域の雇用を守る、地元の資材を優先して使うなど、自社だけでなく地域と共に成長する姿勢が評価されます。
この補助金の落とし穴:意外な盲点と「3年ルール」
ところで、便利な補助金ですが、他の補助金同様注意すべき「落とし穴」も存在します。
丸投げは不採択への近道
ここが最も注意すべきポイントです。
• 「業者丸投げ」の厳禁: 「申請書類は業者が適当に作ってくれる」という思い込みは危険です。事務局は、経営者本人が内容を理解していないと判断した場合、交付決定後でも取り消すことがあります。
• 事業者本人の責任:
申請書類の内容は、事業者が自ら理解し、確認した上で申請しなければなりません。事務局は、事業者が計画を著しく理解していないと判断した場合、交付決定後であっても取消しを行うとしています。
• 行政書士法違反の懸念:
行政書士でない業者が有償で申請書類を作成することは、法律で禁じられています。 悪質な支援業者に高額な成功報酬を支払うトラブルも多発しているため、注意が必要です。
• 3年ルールの壁:
社外から後継者を招く場合、その会社で3年以上の役員または従業員経験が必要です。 半年後の交代予定でも、現時点で在籍しているかどうかが鍵となります。半就任を急ぐあまり、この要件を見落とすと申請すらできません。

• 資産価値の誤認: 重機などの資産価値を過信しすぎないこと。
その他の落とし穴
• パソコンや車は対象外?: パソコン、タブレット、スマートフォン、車などは「汎用性が高く、事業以外でも使える」とみなされ、原則として補助対象になりません。
• 親族経営の厳しいルール: 後継者が親族の場合、その人は**「過去に一度もその会社の代表者になっていないこと」**が条件です。
• 悪質な支援業者: 「絶対に採択される」と言って高額な成功報酬を要求する業者には注意してください。申請はあくまで事業者本人が内容を理解して行う必要があります。
• 後継者の経験不足: 親族以外が継ぐ場合、その会社で3年以上の役員経験や勤務経験が必要です。
第14次公募のポイント
今回の公募で、あなたが手にする可能性のある支援額は以下の通りです。
• 補助上限: 通常は800万円ですが、事業場内の最低賃金を50円以上引き上げることを約束すれば、1,000万円までアップします。
• 補助率: 小規模企業者(解体業なら従業員20人以下)なら2/3、それ以外は1/2です。
• スケジュール: 申請受付は2026年2月27日から4月3日(金)まで。電子申請(jGrants)が必須であり、準備には時間がかかります。
• 賃上げのプレッシャー: 賃上げを約束して補助上限を引き上げた場合、達成できないと補助金の返還を求められることがあります。
実務Q&A:後継者と会社を「磨き上げる」ために
経営者が知っておきたい「事業承継・M&A」の疑問と回答
ここで、経営者の皆様が特に不安に感じやすい実務的なポイントについて、良くある質問と回答をを補助金の公募要領に沿って紹介します。

採択される為の最短アプローチ
最短で採択を勝ち取るための3ステップを伝授します。
半年後に社長就任が決まっているなら、今すぐ以下の3点を実行してください。
1. GビズIDプライムを取得する: 発行には最大3週間かかります。これがなければ申請すらできません。
2. 後継者と「未来の図面」を共有する: 補助金でどの重機を入れ、どう利益を出すか。後継者が主体となった事業計画こそが採択の決め手です。
3. 認定経営革新等支援機関に相談する: 申請には専門機関の「確認書」が必須です。
4. 相見積もりを揃える: 50万円(税抜)以上の買い物をする際は、原則2社以上の見積もりが必要です。これを怠ると補助金がもらえません。
今からやる事・困ったら
「何から手を付ければいいか分からない」という方は、まず以下の行動を。
• 公式サイトから公募要領をダウンロード: 専門用語も多いですが、まずは目を通してみましょう。
• 事務局へ電話相談: 疑問点は「事業承継促進枠」の専用ダイヤル(050-3192-6274)で確認できます。
• 身近な支援機関へ: 顧問税理士や地元の銀行に「事業承継・M&A補助金を使いたい」と伝えてみてください。
事業承継は、経営者にとって人生最後の、そして最も困難な「経営」です。重機の買い替えという目の前の課題を、補助金を活用した「経営のバトンタッチ」という前向きな投資に変えてみませんか?
私は、**行政書士として、かつ国が認定した「経営革新等認定支援機関」**として、事業計画の策定から複雑な書類作成、そして何より「貴社の真の価値」を見出す伴走支援を行っています。
「うちの会社、本当に継げるだろうか?」「補助金の要件、うちは満たしているのか?」 そんな不安がある方、顧問税理士や金融機関に相談するのも少し「気が引ける」という方はまずは当オフィスにご相談ください。丸投げではなく、あなたと後継者の方と一緒に、納得のいく「着地点」と「再出発」をデザインします。
お問い合わせ:事業承継・M&A補助金 相談窓口(経産省認定経営革新等支援機関・行政書士 パークRMCオフィス)まで (※第14次公募の締切は2026年4月3日です。お早めの着手をお勧めします)
第14次公募 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)法人申請書類チェックリストが必要な方はこちらからダウンロードできます。