小規模事業者持続化補助金の、申請受付がスタートしてから1週間経ちました。申請書の準備は順調に進んでいますか?ところで、「様式2(補助事業計画書)」って何を書けばいいの? そう感じた方は少なくないはずです。小規模事業者持続化補助金に応募するためには、自社の現状や課題、今後の計画、補助金で実施する事業内容を、論理的に整理して書き出す必要があります。

そこで、本記事では認定経営革新等支援機関が各項目の記載要件をわかりやすくひも解きながら、実際に採択される計画書に共通する“3つのポイント”をもとに、書き進めるヒントと構成の考え方をご紹介します。これから初めて挑戦する方にも安心して活用いただける内容です。とくに、具体性を増す為に仮想の「内装仕上げ工事業を営む事業者」の立場で具体的に記述して行きます。これを、参考にして頂くとあなたの執筆時間も大幅に削減可能です。申請データの原稿を持って、6月3日迄に商工会議所又は商工会に相談を申し入れましょう。

初めに

これからご説明する事項は、小規模事業者持続化補助金<一般型>の第17回申請受付画面上の記載に沿って進めて行きます。先ずは、この記事を眺めて内容について知って下さい。次に、ご自身で、計画の構想と原稿をある程度纏めてから下記画面から申請システムにログインして頂くと以下の画面に入れます。

出典:工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>

この画面の、「新着情報」の下から4行目の「電子申請」の文字をクリックすると次の画面に遷移します。

小規模事業者持続化補助金<一般型> | 小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

ここで、青いログインボタンをクリックし貴方のIDとパスワードをキーインすると、GビズIDという本人認証ツールが起動しあなたのスマホに「ワンタイムパスワード」というコードを送って来ますので、それをキーインします。

すると、以下の申請システムに入れます。(最初は、あなたの基本情報入力画面が表示されます)

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

今回は、上記目次の申請ステータスに含まれる「経営計画入力(様式2)ー補助事業計画ーについて解説します。

【第1章】企業概要と現状分析

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

(採択ポイント①:一貫性)

まず最初は、企業概要の記述です。小項目は、3つあります。ここで重要な点は、記述内容の一貫性を維持する事です。尚、各コラムの最大文字数は4000字とかいてありますが、16項目全体で8千字以内を目安に作成します。従って、各コラムは500字前後を最大値と考えて下さい。以下、水色のハイライト部分が記入例文です。

自社の概要

当社は、神奈川県横浜市を拠点に活動する内装工事業者であり、創業10年目を迎えました。住宅リフォーム、店舗内装、オフィス改装を中心に、設計から施工まで一貫して対応できる体制を整えております。従業員数は3名、主な顧客は個人オーナーおよび中小企業で、地域密着型のサービスを強みとしています。

📌記載のコツ
「創業理由」「お客様の声」「地元とのつながり」を交えると、ストーリー性が増します。
必須記載事項は、以下の3点です。

  • 会社名、所在地、設立年、代表者
  • 主力事業・取扱商品・提供サービス
  • 地域密着型 or オンライン型のどちらか強みを整理

現在の売上・利益の状況

直近3年間の売上は以下のとおりで、2023年度にはコロナ禍からの反動増で売上は微増しましたが、材料費・人件費の高騰により利益率は減少傾向にあります。

  • 2021年度:3,800万円
  • 2022年度:4,000万円
  • 2023年度:4,300万円(営業利益率 8.2%)

📌記載のコツ
「前年比」「成長傾向」「新規とリピーターの比率」なども可能なら記載。
必須記載事項は、以下の要因です。

  • 売上高・営業利益(決算書を添付するので、祖語の無い様に転記します。最近1年~3年の数字があればベスト。)
  • 主要な収益源(BtoC/BtoB、単価と受注件数など)
  • 月商ベースで記載してもOK

経営課題

現在の課題は、顧客獲得手段の多様化への対応不足、および省力化・業務効率化の遅れです。競合他社の中にはSNSやWeb広告を活用して集客している事例もあり、当社もデジタル化対応が喫緊の課題と認識しています。

📌データの取り方(後述の3Cとも連携)以下のデータソースを使います。

これらのデータとの比較に基いて、自社(又は貴方の事業)の業績の停滞要因(集客、競争激化、人手不足、設備老朽化 等)について述べ問題提起しましょう。

【第2章】 外部環境分析(3C分析+統計)

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

(採択ポイント①と下記の②をつなぐ)

さて次に、顧客ニーズと市場の動向について記述を求められます。ここでのポイントは、先ほど書いた「企業情報」と下記に出てくる「補助事業計画」の内容をスムーズにつなげる為の橋渡しをする事です。

市場動向(Customer)

総務初の統計データによれば、近年の住宅着工件数は2006年をピークに減少傾向にあり2024年度も前年に比べて2%増かのほぼ横ばい状態です。

出典:総務省提供統計ダッシュボード – グラフ画面

一方で、既存住宅リフォーム市場は過去10年間ほぼ安定しており僅かに成長しています。リフォーム産業新聞によれば、リフォーム需要は高齢化と空き家活用ニーズにより今後も底堅く推移すると見られています。

出典:リフォーム業界の市場規模は?2025年最新動向や将来性を解説 : リフォーム産業新聞

📌使えるデータソースには以下のものがあります

これらのデータから、貴方の事業がする該当業界全体の成長性・市場規模・最近の変化(例:EC市場の拡大、飲食業のテイクアウト化、観光需要の回復 など)について記述しましょう。

顧客ニーズ

近年は「バリアフリー改修」や「省エネリフォーム」に対する関心が高まっており、特に50代以上の自宅所有者からの依頼が増加傾向です。自社でもアンケート調査を実施した結果、全体の6割が「断熱性能の向上」や「室内バリアフリー化」を希望していました(※自社調査、2024年1月実施、n=47)。

📌ヒアリング例

  • 既存顧客への簡易アンケート
  • クチコミ(Googleレビュー、SNS)から抽出
  • 日頃の営業活動を通じた顧客の声の取り纏め
  • 「なぜ当社を選んだのか」の理由を具体的に記述

ここでは、顧客ニーズをより客観的に把握している事をアピールします。特に、ニーズの傾向を把握する為にアンケートなどが重要です。しかし、必ずしも今から大規模アンケートを始める必要はありません。クチコミなどをうまく活用しましょう。その際、把握した属性とデータには以下の様なものがあります

  • 顧客の属性(年齢層、居住エリア、購入目的)
  • 近年のニーズの変化(例:非接触・時短・健康志向・SDGs意識)

競合分析(Competitor)

半径5km圏内には内装業者が12社確認されており、うち3社はインスタグラムやGoogleマップレビューを活用して集客を強化しています。当社はこれまで紙媒体中心だったため、情報発信の遅れが顧客流出の一因と考えられます

自社の強み・弱み(Company)

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

  • 強み:現場対応力の高さ、10年以上の地域密着実績、職人の技術力。
  • 弱み:営業・マーケティングの非効率、デジタル販路未整備、事務作業のアナログ化。

📌SWOTは使わず、事実ベースでOK
ここでの、自社の強み分析は補助金上限が50万円であり紙面にも制限がある事から簡潔な記述で大丈夫です。

  • 他社と差別化できる商品・サービス・接客・立地
  • 弱みも簡潔に記載(例:デジタル対応が弱い 等)

【第3章】今後の経営方針と補助事業の企画

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

ここでは、これ迄整理した情報を踏まえて大まかな事業拡大戦略を立てます。

経営方針・目標

「地域密着×専門性」を軸とし、2025年度末までに以下の目標達成を目指します。

  • 年間売上:5,000万円(前年比+16%)
  • 顧客数:年60件(前年比+20%)
  • Web問合せ件数:月10件(現状0件)

📌ここでは、数値目標を掲げます

  • 中期的に目指す姿(売上目標/ブランド構築/新規事業など)
  • 数値目標やKPIがあると信頼性UP

今後のプラン

  • ホームページの全面改修とSEO対策の導入
  • SNS公式アカウントやGoogleビジネスプロフィールの運用開始
  • 現場報告や見積作成のクラウド管理システム導入による業務効率化

📌上記で設定した、数値目標をどの様にして達成するの行動計画を記述します

  • 課題の解決手段をどのように実施するかの構想(補助事業へ接続)
  • ステップ1~3程度で時系列的に記述

【第4章】 補助事業の具体内容

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

(採択ポイント②:具体性)

次は、補助金を獲得して行う「補助事業」の具体的な内容を計画し記述して行きます。ここで重要なポイントは、如何に具体的に記述できるかです。

事業名(30文字以内)

「内装工事業のWeb強化と業務DXによる販路拡大」

📌簡潔に要点を盛り込みます(例:「ネット予約機能導入による新規客獲得事業」)

事業の概要

本事業では、当社ホームページのリニューアルとWeb広告の導入、業務効率化のためのクラウドツール導入を行い、新規顧客開拓と受注率向上を狙います。これと並行して、キャンペーン用のチラシやパンフレットを印刷しポスティングも実施します

📌ここでのポイント

誰に/何を/どうやって/どんな成果を期待して行うかを明記します。

背景・目的

既存の顧客依存構造を脱却し、新たな顧客接点を獲得する必要があります。また、事務作業や報告業務に多くの時間を費やしており、デジタル化により本業への集中度を高めることが目的です。一方、国土交通省住 宅 市 場 動 向 調 査報 告 書の統計によれば、リフォーム住宅の設備更新・変更はその78%が「水回りの設備改善」に集中していることが市場の声として表れて居ます。従て、当社としてはこれらの設備改善に焦点を当てた新規開拓施策を実施して行くのが妥当と考えられます。

出典:令和5年度 住 宅 市 場 動 向 調 査 報 告 書 国土交通省 住宅

また、令和5年度でリフォーム実施世帯が施工業者を探した方法の内、新規業者への依頼に繋がった経路は、約68%が既存取引や知人の紹介であった反面、インターネットが15.7%であり直接セールスが8.7%とでした。これは令和4年に比べ令和5年では、インターネット経由が僅かに減少しているものの、直接セールスが3.8ポイント伸びています。また、インターネット情報への依存度も15%以上を維持してます。従って、人手不足の状況下で有効な取り組みとしては、営業要員の人件費を必要としないインターネット広告を選択る事に資源の効率的な投下としての合理性があります。

出典:令和5年度 住 宅 市 場 動 向 調 査 報 告 書 国土交通省 住宅

📌ここでのポイント

  • 経営課題を踏まえた必然性を記述(=前章との一貫性)
  • 課題は、人手不足/手作業の限界/属人化など、具体的に提示
  • 顧客・市場の声に基づいていることが重要

具体的な取り組み

上記で確認した、政府統計データに基づく施策としての、当社ホームページのリニューアルとWeb広告の導入、業務効率化のためのクラウドツール導入の具体策は以下の通りです。

  • Web制作会社に依頼し、スマホ対応のレスポンシブサイトを構築
  • SNS公式アカウントを開設し、無料相談窓口を設置
  • クラウド型見積書作成ツール(例:Misoca、board等)を導入

📌ここでのポイント

クラウドシステム導入、RPA活用、レジの自動化などの他にも、展示会への参加やチラシのポススティングもあります。
「Misoca]はクラウド会計ソフトの姉妹品です。会計記帳作業が軽減される事が期待されます。年間契約で、請求書15通迄が8,800円、100通迄が33,500円です。

請求書作成ソフト – Misoca(ミソカ)でクラウド請求書・見積書発行が無料 – 弥生株式会社【公式】

「board」はクラウト見積~請求書発行システムで月額1,000~4,000円程度です。

クラウド請求書作成ソフト(インボイス制度・適格請求書対応)、見積書発行、販売管理ツール – board

クラウドシステム導入、RPA活用、レジの自動化などの他、展示会への参加やチラシのポススティングもあります。

【第5章】効果と数値試算

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム

(採択ポイント③:成果の説得力)

最後は、補助事業の取り組みを実施した結果期待できる効果を数値に換算してアピールします。ここで重要なポイントは、成果としての数字の計算根拠です。

取組の効果

  • Web問合せ経由の成約数を年間12件に増加
  • 月あたりの事務工数を10時間削減
  • アナログ対応の削減により、受注対応時間を短縮

📌ここでのポイント

  • 売上、集客、業務時間短縮などの見込効果を「定量」で示す
  • 例:売上20%UP、来店数1.5倍、処理時間半減

効果の試算

  • 売上増加効果:約120万円(1件10万円×12件)
  • 時間削減による労務コスト圧縮:約36万円(時給3,000円換算×120時間/年)

📌ここでのポイント

  • 【投資額 → 見込売上 or コスト削減効果】でROIC風に計算(ROICとは、Return On Invested Capitalの略称で、企業が投資した資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す財務指標です) 
  • 表形式やグラフがあると説得力UP(PowerPoint化も可能)

ここが採択の分かれ道

3C分析とデータ活用まとめ表

必要に応じて、図表(市場推移グラフ、顧客層構成円グラフなど)を挿入すると、より説得力が増します。

補足:3C分析とは

3C分析とは、Customer/Competitor/Companyの3つの頭文字Cを略した分析手法です。顧客のニーズを満たし、ライバル業者を凌ぐための、自社が上回れるだけの魅力をどう伸ばすかという検討に使います。本分記載例の第3章で記述済みです。ご参照下さい。

「他社を上回る魅力で…」←Company(自社)の強み・弱み
「顧客のニーズを満たし…」←Customer(市場・顧客)のニーズ
「競合先を凌ぐ…」←Competitor(競合)の強み・弱み

データ活用まとめ表

次に、具体的な図表テンプレートや統計データの探し方を示します

図表テンプレート例(WordやExcel、Googleスプレッドシート等で作成可能)

【図1】住宅リフォーム市場の推移(表記方法の具体例)

年度市場規模(億円)
201965,000
202061,500
202163,000
202266,000
202367,200(推計)

出典:矢野経済研究所「住宅リフォーム市場に関する調査(2024年版)」

【図2】顧客層の年齢別構成(自社アンケート)

円グラフ例:MSエクセルで簡単に描けます。

  • 30代以下:5%
  • 40代:15%
  • 50代:35%
  • 60代:30%
  • 70代以上:15%

※自社調査、2024年1月実施、n=47

【図3】競合事業者のWeb活用状況(半径5km圏内)

競合業者名ホームページSNS活用LINE受付Googleレビュー
A社ありInstagram×★★★★☆
(45件)
B社×××★★☆☆☆
(10件)
C社ありFacebook★★★★★
(80件)

※Googleマップ検索による自社調査(2024年4月)

統計データの探し方・引用ポイント

各省庁が、統計サービスサイトを設置しています。貴方の事業の産業界が、どの省庁に属するか先ず確認しましょう。

🔹1. 市場規模・業界動向(業界全体のトレンドを説明)

製品やサービスを提供する立場からの、産業界統計ならば経産省や国交省のサイトがあります。

🔹2. 顧客ニーズ(年代別需要や意識調査)

BtoCビジネスで、消費動向を調べるには総務省の統計サイトが便利です。

🔹3. 地域・商圏分析(エリア内の事業者数や人口など)

同じく、BtoCビジネスで地域の消費者人口の数や年齢層等を調べるにはe-Stat政府統計サイトがあります。

  • e-Stat(政府統計ポータルサイト)
    https://www.e-stat.go.jp/
    → 地域別人口、世帯数、高齢者比率などをExcelで抽出可能
  • 商工会議所・中小企業庁関連のレポート
    地元商工会議所HPで「地域経済動向」や「中小企業白書」抜粋が見つかる場合もあります。
ワンポイント:統計データの引用形式(書き方)

情報入手先が、政府統計であると審査官は計画書を安心して読み進める事ができます。それには、統計調査の正確な名称や発行年度を明記しましょう。ここが曖昧だと、個人のその場凌ぎの思い付きである印象を与え説得力が半減してしまいます。

  • 《良い例》
     国土交通省「住宅市場動向調査(令和5年版)」によれば、リフォームを希望する人のうち「断熱性能向上」を重視する割合は65.2%であり、当社の今後の商材方針と合致している。
  • 《悪い例》
     どこかの調査でリフォーム需要が増えていると聞いた。

必ず出典を明記し、可能ならURLも補足資料に添付しておくと審査での信頼性が高まります。

尚、この補助金の応募要件その他についてはこちらの記事の後半をご参照ください。

まとめ

如何だったでしょうか?御覧の通り、記述すべき時数はそれほど多くはありません。おそらく、3,000文字以内に収まっていると思います。これに、統計のグラフやマトリックス表を加えると紙面はかなり消費されてきます。そして、この後は様式3で「系計画書」と「資金調達方法」を記入します。ここ迄書けたら、商工会議所(又は商工会)に面談を申し入れ、これら記入済み原稿をプリンとアウトして提示し細かいアドバイスを受けます。

ここまで、5つの章立てで「補助事業計画書」の必須記載事項をご紹介して来ました。現状分析➡外部環境の3C分析➡経営方針と戦略➡補助事業の具体策➡数値上の効果の宣言、の順で整理して来ました。あなたの事業は、貴方以上に正しく理解してる人は居ません。従って、全体を通じて概要の一貫性の維持には違和感なく進める事ができるでしょう。しかし、補助金の具体策に対してどれだけの数値効果が期待できるかと云う点になると客観的証明が求められてきます。すると、この客観性は3C分析に遡って顧客の声や各種統計を引用する必要が生じます。

しかし、心配はご無用です。一般枠の補助上限は、50万円であり1,000万円ではありません。まずは、上記本文でハイライトした記述をあなたの事業に置き換えて書き込み、経費明細項目と資金調達用を簡単に埋めて商工会議所(又は商工会)に持ち込んでアドバイスを受けましょう。後は、時間との兼ね合いです。

最後までお読み頂き有難うございました。もし、この記事のなかで疑問・質問を持たれた方は、遠慮なく質問して下さい。これは、小規模事業者に取って、最もお薦めなリスクの少ない補助金です。無料相談もおまちして居ります。

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